まとめ(戦略ショートストーリー)
様々な年齢層、主に大人数で利用する方をターゲットに「レストランや給食事業で培ったノウハウ」に支えられた「食事が美味しい」という強みで差別化しています。豊富な食事メニューが楽しめるレストランカラオケを全国に展開し、認知度も高く、幅広い顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
「顧客ニーズの変化への対応」
シダックスの大量閉店が報道され、話題になっていました。しかし、大量閉店することが悪いことだとは、一概には言えません。なぜなら、大手コンビニチェーンは大量出店もしていますが、同時に大量に閉店もしながら、成長し続けています。むしろ、チェーンストアが成長するうえで、不採算店舗を閉店することは、当たり前とも言えます。
もちろん、閉店することは、その店を利用していた顧客に迷惑をかけることになりますので、存続させるために最善を尽くすというのは大前提です。
今回、注目すべきは、普通、業界が成長すれば、その業界の大手企業も同じように成長すると思われますが、シダックスの場合は、そうはなっていないということです。
上記で分析したように「美味しい食事」を強みにして戦うという戦略は競合と差別化できているようにみえますし、実際にケータイ会員が920万人、年間利用者数約2,500万人というすごい実績を残しています。しかし、夜間および深夜帯の顧客が大きく減少しているようですので食事を売りにしているシダックスにとっては、厳しい状況といえるでしょう。
そして、業界で成長しているのは、流行となっている1人カラオケの顧客を取り込んだ企業や「安さ」を売りにしている企業のようです。つまり、カラオケ業界は成長しているものの、顧客のニーズが変化しているということです。言い換えると、顧客がカラオケ店への求めること、カラオケ店の利用の仕方が変化しているということです。
顧客ニーズの変化に対応していくことが、企業の成長していくうえでカギとなります。これは、当たり前に思うかもしれませんが、簡単ではありません。例えば、高度成長期の日本の旅館は、収益の柱である社員旅行を受け入れるために、大人数を収容できる宴会場を充実させたものの、経済状況や顧客ニーズの変化により、社員旅行が減少し、個人での旅行が増えたことで、大きな宴会場などを抱えた旅館の経営が苦しくなるということが、あったようです。
このように、顧客ニーズに対応するために、設備投資を行ってしまうと顧客ニーズが変化したときに、柔軟に対応するということは難しくなります。特に、業績が悪化してから、顧客ニーズに対応するために大きな設備投資をすることはより困難です。