「身分は士でなくても、心は士に劣らないようにしよう」
我が国の武士道は、名利を捨てて国のために忠義を尽くす、という生き方を理想とした。梅岩は、商人の道もそれと同じだと考えた。
今の時代にも不忠義の士はいる。商人にも「二重の利」を貪むさぼり、訳ありの金を受け取っている者もいるが、そういうことは先祖に対する不孝であり不忠義であると認識し、身分は士でなくても、心は士に劣らないようにしようと思わないといけない。
商人の道も士農工の道と異なりはしない。孟子もいっているではないか。「道は一つだけだ」と。士農工商は、いずれも「天の一物」(天がつくった物)である。天の道に二つの道があろうはずがない。
武士道は我が国の倫理観の根底をなした伝統的理想であるが、それを農工商のそれぞれの生きる道に広げたのが、梅岩の思想だった。士農工商の四民は、それぞれ職業は違えど、同じ一つの「天の道」を歩むべきとする思想は、四民平等、国民同胞の基盤となり、その上で江戸の経済発展と、明治以降の近代化が推進されていった。
文責:伊勢雅臣
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『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』
著者/伊勢雅臣
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