現在、米ドルの信用は10年前ほど高いとは言いがたく、今後、あたらしい米国大統領によっては、自ら米ドルを毀損させ、「肉を切らせて骨を断つ」戦略へと大きく舵を切る可能性もあります。そして、「世界の米国」の座を自ら降りて立て直しを図る一方、おそらく波乱する世界経済を安定させるために、新たな基軸と「顔役」が必要になります。僕には、その基軸がSDRで、顔役が中国になる可能性が高まったいうことに見えるのです。
IMF理事会によるバスケット評価手法の見直しは、基本的に5年に1回行われており、直近では昨年10月に開催され、この会合で、どの通貨をどの程度バスケットに入れるか決めるわけですが、現在、中国は経済規模で世界2位となり、貿易量と取引の自由度が一定水準に達したことで、ドル、ユーロ、ポンド、円などに続く5番目の国際決済通貨としての認められ、いよいよこの10月から正式にバスケット入りすることになりました。逆の見方をすれば、10年前には考えられない中国の大躍進ということになります。
これによりSDRバスケットの比率は、
- 米ドル=41.9%→41.73%
- ユーロ=37.4%→30.93%
- 英ポンド=11.3%→8.09%
- 日本円=9.4%→8.33%
- 中国元=0%→10.92%
となりますが、今後中国元のシェアが拡大することが考えられ、もし5年後の2020年の評価見直しまでに米国が基軸通貨の座を事実上降りれば、さらに中国のシェアが拡大し、そこにユーロと距離をとった英ポンドが合流すれば、英中連合が最大シェアをホールドすることも考えられます。それは、世界の基軸通貨を実質的に保有する国が、大きく変わることを意味するのです。
5年に一度、大幅な見直しが行われるIMFのSDR比率。次回2020年は、いまとまったく違う風景になっているかもしれません。
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『高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋
著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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