アップルペイに気をつけろ。Suicaは手数料狙いの「お布施カード」に

 

しかし結論から先にいえば、FeliCaは国際規格として認められなかった。国際規格は、ISO(国際標準化機構、本部・スイス)で決められていた。ISOは電気分野を除く工業分野の世界標準、つまり国際規格を策定する民間の非政府組織である。

当時、国際規格の非接触ICカードは存在しなかった。香港でFeliCaと争ったライバルの「マイフェア」(オランダ)も国際規格ではなかった。しかしFeliCaを国際規格として認めなかったISOは、マイフェアをタイプAとして国際規格として承認した。

理由はいろいろ取り沙汰されているが、要するにマイフェアが普及している欧州勢からの強い反対があったからだ。性能としてはFeliCaのほうが優れていたが、マイフェアでビジネスしている欧州ではFeliCaと同等の非接触ICカードを開発する力がなく、作れないものは標準化できないという雰囲気が会議を支配したためだった。

当時、JR東日本がプリペイド式磁気カードから非接触ICカードへ入改札システムへ切り替える時期にあたっており、その競争入札にソニーもFeliCaで応募する予定だった。

しかし当時、JR東日本は完全民営化前で特殊会社」だった。国に準ずる機関に相当したため、WTO/TBT協定によれば、国もしくは国準ずる機関が10万ドル以上の調達をかける場合には国際規格があるものはそれを優先的に使うことが求められていた。

このままでは競争入札は、マイフェアが落札することになる。そこで日下部氏は、FeliCaカードを無線(非接触、NFC)とICカードの二つからなる製品と見なし、無線部分で国際規格と認定されればFeliCaカードは国際規格のNFCに対応したICカードだと主張できると考えた。なかなか苦しい理屈だが、NFCはワイヤレスLANと同じSC6で審議され、新しいコミュニケーション手段の通信規格の国際規格として認められた。それが、ISO/IECの18092という規格である。

今回のiPhone7のFeliCa搭載で、FeliCaのNFCが国際規格ではないという指摘がおおくなされたが、少なくともISOの国際規格としては認められている。ただ欧州を含め広く採用されなかったのは事実である。

日下部氏の気転で、JR東日本の競争入札に勝ち、FeliCaは採用される。FeliCaカードは、Suicaカードとなって電子乗車券&電子マネーとして広く浸透していく。

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