日産の「縦割り企業体質」をたった1年で変えたゴーン社長の凄腕

 

日産は創業期より先進技術の吸収に積極的で「技術の日産」と呼ばれる高いポテンシャル(潜在力)のある企業で、弱いのは販売力やデザイン力をはじめとするマネジメント力とその負の蓄積である「企業文化」でした。最も問題であったのが「他責の文化であり緊張感のなさ」です。「日産のような大きな企業は潰れない」、責任を他人のせいにして「自分は悪くない」として「部門の壁」を築けば安楽でいられたのです。

みんなが楽でそれなりにやっていけるのなら、人間の悪い面の性(さが)で「習慣」化して「企業文化」にならない方がおかしい。日産には、本来的に「リバイバル(再生)プラン」で再生できるポテンシャルがあり、短期でこのようなプランづくりができる人材も多くいました。少し付け加えるのなら、松下幸之助さんは成功の条件の第一に熱意を挙げることが多かったそうで「熱意があれば知恵が生まれてくる」と言われています。

人は「死地」に追い込まれたとき「ひたすら突撃」するしか選択の余地はなく、大将その人自身がコミットメントして「死地」に追い込んでいるなら自分の運命とそのなすべきことは自ずから決まるというものです。そして、いくら困難なことであっても、その道筋が明確で具体的で到達する地平に希望があるなら人の習慣も変わらざるを得ないでしょう。

ゴーンさんは松下幸之助さんに劣らぬ知恵の持ち主なのでしょう。白紙からはじめて、現場の人の話を聞きながら1年かけて解決策を探りだし生き残りさらに成長できるプランを作成して、剛腕の知略と実行力で最も困難とされる「企業文化」を変えてしまったのですから。そのプランの作成については、社内人材でプロジェクトチームをつくり大筋を明確にして他の機関に任せず自分たちで完成させています。企業改革で一番難しいのは人の習慣化した考え方を変えることです。

image by: Wikimedia Commons

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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