【書評】部下の育成に悩む人に教えたい、さかなクンの「夢中力」

 

さかなクンは学校の授業中にはノートに魚の絵を描き、休み時間は図鑑を見て、常に魚のことばかり考えていた。同級生は最初は「魚バカ」とからかっていたのに、次第に「そんなに魚っておもしろいのかよ」と声をかけてきて、話を聞いてくれるようになり、学校の中でお魚好きとして有名になっていく。

しかし、そのせいで学校の成績が悪くなるばかりで、算数のテストでは数字を見ていると数字がお魚の模様に見えてきて、答案用紙には答えの代わりに魚の絵を描いて、先生からこっぴどく叱られてばかりだった。

家庭訪問で、担任の先生からは「彼は絵がお上手で、彼の描く絵は素晴らしい。ただ、授業中も魚の絵を描いてばかりで授業に全く集中していません。もう少し家庭でも勉強のご指導をしていただけませんか」と毎年同じことを言われたが、母はいつも、言い返した。

「あの子は魚が好きで、絵を描くことが大好きなんです。だからそれでいいんです

「しかし、いまのままでは授業に全くついていけていません。今後困るのはお子さんなんですよ」

「成績が優秀な子がいればそうでない子もいて、だからいいんじゃないですか。みんながみんな一緒だったらロボットになっちゃいますよ」

「では、絵の才能を伸ばすために、絵の先生をつけて勉強をさせてあげたらいかがですか」

「そうすると、絵の先生と同じ絵になってしまうでしょ。あの子には、自分の好きなように描いてもらいたい。今だって、誰にも習わすに、自分であれだけのものを描いています。それでいいんです」

母は先生に語ったこの言葉どおり、「勉強をしなさい」「お魚のことは、これくらいにしときなさい」などと言ったことは、一切なかった。「お魚が大好きなんだから、好きなだけ絵を描くといいよ」と、いつも背中を押してくれた。これが、さかなクンが今まで一度たりとも、お魚好きを自分自身で恥ずかしいとか変だと思うことがなかった理由と言える。

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