とは言っても、かなり適当に名前を付けることもあります。何を隠そう、『ガリガリ君』のネーミングを考えた時もそうでした。
当時の井上秀樹専務からは、「ネーミングは斬新に」というオーダーが来ていました。『ガリガリ君』の場合、かき氷から商品開発が始まっています。カップからスプーンで削る時、「ガリガリ」という音がしました。だから、みんなで考えて、『ガリガリ』という商品名にしよう、とほぼ決まりかけていました。
ところが、発売直前になり、「あれ、何かおかしくない?いいんだけど、ちょっと変じゃない?」という声が出て、井上専務のところに相談に行きました。すると、
「〝君〞をつければ、楽しくなるんじゃないか」
と案が出され、『ガリガリ君』になりました。
「ガリガリ」では、単なる修飾語で、なんだかよくわかりません。
ですが、人の名前のように固有名詞にした瞬間から個性が生まれ、愛着も湧きやすくなり、覚えてもらえるようになったのだと思います。
「あの『ガリガリ』、おいしかったね」よりも「あの『ガリガリ君』、おいしかったね」
と言ったほうが、断然クチコミに乗りやすいのです。
もし、「ガリガリ」という修飾語のままでしたら、ここまでヒットはしなかったでしょう。
商品開発部で決めたネーミングでも、「なんか、変」「なんか、違和感がある」「でも、どうすればいいかわからない」と感じた時には、いくら時間がなくても「まっ、いいか」とそのままにしないことです。
納得いくまで話し合ったり、ほかの部署の人に相談したり、意見を聞いたりしたほうが、結局はうまくいきます。
食べ物やモノに人の名前を付けると、たちまち命を持つのをよく感じます。