全米メディアは安倍トランプ会談の「成果」をどう報じたのか?

 

2つ目は、その軍事安全保障の問題です。日本にとっては「駐留費負担に関して難癖」をつけられることもなく、「尖閣は安保条約5条適用」ということで、「満額回答」という評価があるようですが、基本的には現時点でのトランプ政権というのは「アメリカの過去の東アジア政策を踏襲」するという、つまりは「現状維持だということは確認できたように思います。

ただ、国務長官にレックス・ティラーソンが就任して体制は固まったとはいえ、国務省内の人事はまだ進行中ですし、この「東アジアは現状維持」というのが、トランプ政権として公式の方針になった、それで確定したということを言うのは時期尚早だということは言えます。

例えば、日米首脳会談の直前に、大統領は「一つの中国論を踏襲」すると言明してますが、果たして「一つの中国論」というコンセプトを、この人と支持者がどこまで理解しているかは怪しいわけで、そこが怪しい以上は政策として確定したということはできないように思うからです。そうではあるのですが、首脳間の公式の会談として、そのようなニュアンスが濃厚に確認された意味はあると思います。

その中で一つ欠落しているのが米韓と日韓の問題です。韓国をどうやって落ち着かせるのか、韓国を改めて東アジアの安全保障の中で、どのように位置づけるのかという問題は、まさに北朝鮮の出方も含めて「単なる現状維持では済まされないように思われます。この点については、今回の会談でもハッキリとは浮かんでいないわけですし、今後も注意して見ていかなくてはならないように思います。

3つ目は、経済関係の問題です。こちらは結局、トランプ大統領の側からは何の文句も出なかったわけです。懸念された「日本市場における米国車販売の問題」なども、会談でどういうやり取りがあったのかは分かりませんが、例えば2月10日の共同記者会見を受けてのCNBCでのフィル・ルボー記者のコメントなどを見ても、「縮小しつつある日本の自動車市場を深追いしても得るものは少ない」というのは、業界として当然の判断で、そこから考えると「もっとシボレーを買え」とか「中国みたいにもっとビュイックを買え」といった圧力はこれで消えて行くと見ていいと思います。

ただ、私としては、トヨタの「1兆円再投資」もそうですが、とにかく、日本企業における「米国での投資や雇用を加速するという動きには警戒感を持っています。市場に合わせたマーケティング部門や、当該市場向けの生産設備を移転するのなら良いのです。ですが、トヨタが正にそうであり、日産などの他の自動車メーカーが、あるいは部品メーカーがそうであるように、そして多くの製薬会社がそうであるように、日本からアメリカに「高度な頭脳労働部分を流出させるという動きは、抑制をかけねばダメだと思っているからです。

こうした動きはGDPを毀損します。日本国内に「若者の貧困」だとか「地方の荒廃」といった問題が日常茶飯事として出てきているのも、ほとんどがこの点に原因があると思うのです。その意味で、人類史上他に類例のない「頭脳労働・高付加価値機能」を流出させて平気な多国籍企業と、その発展イコール日本の国力の発展だと勘違いしている政治と行政には、そろそろ修正が入っても良いのではないでしょうか。

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