なぜ高級マンションは高層階から売れていくのか?
都心部で高級マンションが売り出されると、高層階から売れていくと言われています。
もちろん高層階の方が、価格は高く設定されています。つまりは、高い物件から先に売れていくというのです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
それだけ、お金を持っている人がいる?
それも言えるでしょう。
が、高層階には、実は税制上の隠れた優位性があるとされていたからなのです。
「タワーマンション節税」
という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。
このメルマガでも、時々、ご紹介しました。
タワーマンション節税というのは、簡単に言えば、次の通りです。
相続税の対象となる土地、建物の評価額は、固定資産税の評価額が基準となりますが、この固定資産税の評価額は、一つのマンションでは一つの価格しかつかないことになっています。つまり高層階のマンションと低層階のマンションは、価格は全然違うのに、広さが同じであれば、相続税の評価額は同じになるのです。
そのため、高層階の高いマンションを買えば、低層階と同じ評価額しかされないので、その差額が、相続税の節税になるということです。
タワーマンション節税のその後
ただし、このタワーマンション節税には、落とし穴があることを2014年9月号でご紹介しました。
タワーマンション節税のどこが落とし穴かというと、相続税の評価額を「固定資産税の評価額」で決めるというのは、便宜上そうされているだけであって、原則としては時価で換算されることになっている、だから、固定資産税を基準にして申告していても、税務署から、時価で換算されて修正される恐れがある、ということなのです。
そして、税務当局のタワーマンション節税を快く思っておらず、明らかな節税目的のタワーマンション購入に対しては、追徴税を課したこともある、それが、2014年9月号でご紹介した内容です。
で、今回は、その続きの話をしましょう。
最近になって税務当局は、タワーマンション節税に対して厳しく対処するようになりました。
今年度から、固定資産税の評価額が改正されたのです。20階以上のマンションの高層階に対しては、階を上がるごとに高くなるように設定されます。最大で1階と最上階の差は、十数%程度になるのです。
が、この固定資産税の改正は、かえって「タワーマンション節税」を後押しすることになるかもしれません。
というのは、高層階と低層階の価格の違いは、わずか十数%では済みません。マンションによっては、2倍以上の価格差が生じる場合もあります。50階建てマンションの50階と1階を比較して、価格差が10%などということはあり得ないでしょう。
だから、新しい固定資産税を適用されたとしても、節税策としてはまだ十分にメリットはあるということです。
またこの新しい課税方法が適用されるのは、2017年4月以降に販売されるマンションです。それ以前に販売されたものは、以前のままの固定資産税が適用されるのです。
ということは、中古のタワーマンションは、節税策としては以前とまったく遜色ないということなのです。
もちろん、先ほども述べましたように、固定資産税評価額というのは、あくまで便宜上の評価基準なので、税務署から時価に換算されて修正させるというリスクは今もあるのです。税務署が、今までそれをあまりやっていないというだけであって、「それをやらない」ということではないのです。
だから、筆者として、おすすめできる節税法ではありません。
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