東京のど真ん中に建った高級マンションが一瞬で売れた、というニュースを聞くと「都心の億ションなんて成金がステイタスで買うか、外国人が投資目的で買うんじゃないか」と思ってしまいがち。しかし、日本の富裕層はそこまで馬鹿ではないようです。いま、日本人の富裕層がこぞって一等地の億ションを買っている本当の理由について、メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の著者で元国税調査官だった大村さんが徹底解説。さらに、高級マンション購入にひそむ「落とし穴」についてもアドバイスしています。
億ションが一瞬で売れてしまう理由
都心の一等地に建てられたマンションが、発売と同時に完売したというようなニュースを時々耳にします。
たとえば、2015年の年末から2016年春にかけて、「パークコート赤坂檜町ザ・タワー」というマンションが完成し、販売されました。
地上44階建ての超高層タワーマンションで、戸数は322です。場所は港区赤坂9丁目の東京ミッドタウンに隣接しているという超一等地です。売主は、三井不動産レジデンシャルです。
なにからなにまですべて「超一等」という感じのマンションです。
もちろん、値段も超一等です。
最高価格の部屋はなんと15億円です。
そして、マンション全体の平均坪単価(3.3平方メートルあたりの価格)は約1000万円なのです。
このマンションは、バブル以降の最高額のマンションだとされています。
しかし、このマンション発売するやいなやすぐに完売したということです。
昨今の高級マンションは、中国人や台湾人が購入しているというイメージがありますが、現実には、さほど多くはないようです。
購入者の大半は、日本人であり、しかも投資ではなく、住居やセカンドハウスとして購入しているものが多いそうです。
つまりは、このような超高級マンションを、「買って住もう」という人がけっこう多いということなのです。
なぜこのような超高級マンションが、瞬時に売れるのでしょうか?
いくら高級といっても、所詮マンションなので広さは限られています。
どうせなら、そこまで一等地じゃなくても、便利のいいところに豪勢な一戸建てを買った方がよほど「金持ち感」は味わえるんじゃないか、と貧乏人の発想では思ってしまいます。
しかし、高級マンションが売れるのは、単に「住居」としての価値だけではないのです。資産管理という面において、高級マンションは非常に優れているのです。もっと有体にいえば、相続税対策、固定資産税対策になるということなのです。
どういうことか説明しましょう。
遺産は金ではなく不動産で残せ
金持ちが、高級マンションを買う事の大きな目的として「相続税対策」があるといえます。
もともと遺産を「家」で残すことは、実は非常に相続税の上では有利になっています。
財産をお金や預貯金で残せば、そのままの金額が相続税の対象財産となります。
たとえば、1億円を預金で残せば、1億円まるまるが相続税対象額となるのです。
しかし、「家」の場合は、そうではありません。
というのも、家の場合の遺産としての評価額は、土地の部分は路線価を基準に、建物部分は、固定資産税の評価額を基準に決められます。
路線価というのは、国税庁が、毎年、決める、道路に面している土地の評価額のことです。
この路線価は、市場価格に近い価格が設定されますが、市場価格よりも高くなった場合は、相続税を取り過ぎることになりますので、やや低めに設定されているのです。
固定資産税評価額というのは、市区町村の担当者が建物を見て、これはいくらぐらいかというのを算定して決めます。そしてこの固定資産税評価額は、年を経るごとに減額されていきます。年を経れば建物の価値は減っていきますからね。
路線価にしろ、固定資産評価額にしろ、たいがいの場合、市場価額よりも若干少なめに設定されています。
しかも、建物の場合は、建ててから年数を経るごとに価値は下がってきますので、10年も経てば、半額以下になることも珍しくありません。
たとえば、とある男性の遺産に4千万円で購入した住宅があったとします。
この住宅は購入するときには、土地2千万円、建物2千万円でした。購入してから20年後に、持ち主が死亡し遺産となったのです。
で、相続税の評価額を算出した場合、土地の値段は路線価を基準にすれば1800万円となっており、建物は固定資産税評価額が600万円となっていました。
相続税の対象となる遺産としての評価額は2400万円だったのです。
つまり、4000万円の資産が2400万円にまで圧縮されたのです。
土地の場合は、値上がりする可能性もあり、すべてのケースに当てはまるということではないけれど、大半のケースでは、遺産は預貯金で残すよりも、家で残した方が、遺産としての評価額は減少するのです。
そして、マンションには、一戸建てよりもさらに有利な条件があるのです。