トランプは、勝手に意見を変えたのか?
ところで、トランプさん、昨年12月には、「一つの中国を認めるかどうかは、交渉次第」などと言っていた。なぜ、わずか2か月で意見を変えたのでしょうか?
一方、習氏は電話会談で、米国の新政権に対する中国の様子見作戦が実ったこと確認した。中国政府はトランプ政権に対し、米国の「一つの中国」支持が両国関係にとって破ることができない前提条件であることを表明していた。
(同上)
「様子見作戦が実った」そうです。つまり、「何もしなかったら、勝手にトランプが意見を変えた」と。そうなのでしょうか??? そうなのかもしれません。しかし、思いだされるのは、クリントン政権一期目に起きた、「クリントン・クーデター」のこと。
米中関係は、1970年代初めにニクソンと毛沢東が和解した後、概して良好でした。両国には、「ソ連」という共通の敵がいた。しかし、1980年代末から90年代初めにかけて、大きな危機が訪れます。一つは、1989年に起こった「天安門事件」。これで、欧米世論は、一気に「反中」になった。もう一つは、1991年末に起こった「ソ連崩壊」。「共通の敵」が消えたことで、アメリカでは、もう中国と仲よくする意味はない!」という意見が力を増した。1993年1月、大統領に就任したクリントンも、そんな世論を意識して、当初非常に「反中」だったのです。
で、中国は、どうしたか?このあたり、ニクソン、キッシンジャーと共に米中関係を好転させた男ピルズベリーさんが、『China2049』で詳述しています。アメリカが反中に転じることを恐れた中国は、なんとアメリカ政府内に「強力な親中派グループ」を組織し、クリントンの「反中政策」を転換させることにした。ピルズベリーによると、「親中派グループ」には、
- 国家安全保障担当補佐官トニー・レイク
- 副補佐官サンディ・バーガー
- 国家経済会議議長ロバート・ルービン
- 財務次官ローレンス・サマーズ
などが含まれていた。ルービンは、元ゴールドマンサックスの会長で、後に財務長官になりました。サマーズは、ハーバード大学の経済学者で、ルービンの後に財務長官になった。確かに「強力」です。
「親中派グループ」は、政治家の味方を増やしていった。そして、何が起こったのか?
ついに1993年末、中国が現在、「クリントン・クーデター」と呼ぶものが起きた。中国に同調する面々が大統領に反中姿勢の緩和を認めさせたのだ。クリントンがかつて約束したダライ・ラマとの新たな会談は実現しなかった。対中制裁は緩和され、後に解除された。
『China2049』
驚愕の事実ですね。中国はなんと、アメリカの外交政策を180度転換させることに成功したのです。93年といえば、今から24年も前。中国のGDPは、たったの6,230億ドル。これは、当時の日本の7分の1。今の中国と比べると、18分の1。こんな弱小国家だった1993年でも、中国はわずか1年でアメリカの国策を180度転換させる力があった。
国力増加に比例して中国が「工作費」を増やしたとすれば? トランプの意見を2か月で変えることも可能なのではないでしょうか?
以上、証拠はありません。ただ、明らかになった過去を見れば、「今はこんなことやっているのではないか?」と想像できます。