【書評】コメダ珈琲店創業者が語る、行列のできる喫茶店の作り方

 

加藤氏はコメダ珈琲店を「会社の応接室自宅の居間のように使う」という名古屋のお客さんの店にしたかった。名古屋人は合理的に考える人が多いので、喫茶店に行けば冷暖房の電気代も払わなくていいし料理の後片付けもしてくれるなら便利だと、使い勝手がよければ利用してくれるはずである。

たとえばファッション関係者のような高級な客に向けた店は、普通の人には日常使いの店にならないから、「話のネタに一度行ったからもう十分」と、利用してももう来なくなってしまう。

喫茶店関係者の愛読書『月刊喫茶店経営』には新しい店が次々に紹介されていったが、数ヶ月後にそれを模した店がすぐ現れる。こんな追いかけっこをしていても仕方がないな、と思った加藤氏は、差別化のために、「駐車場完備の大型店」「長時間営業」「コーヒーは均一の味」という基本方針を定めた。

当時の名古屋では「レストラン喫茶」と呼ぶ、食事メニューを充実させた業態の店が流行っており、ハンバーグ定食や生姜焼き定食、カレーライスなどのごはんモノを出す店が多かった。しかしコメダ珈琲店は、実家が米屋なのに、パンメニューしかやらなかった。安易に流行に飛びつき他の店と同じことをしないこと、そしてプロの料理人を雇用しなくても全店均一の味が出せるようにである。

当時はサラリーマンでも「一国一城の主」に憧れ、「喫茶店でもやるか」「女房に喫茶店でもやらせようか」と考え、比較的低資本で始められた。しかし「でもという限り本気度は低いから、そんな玉石混交の喫茶店激戦区の中で加藤氏は長く続く店にするため、本物や差別化を考えていき、お客さんを楽しませる工夫を商品以外にも考えた。山小屋風の店、座席の左右の幅は何cm、読み放題の新聞や雑誌があることなど様々だが、「長靴型の容器」もその一つである。

名古屋から始まったコメダ珈琲店は、東京をはじめ全国各地に700店以上を展開し、外資系らしいオシャレな雰囲気のスターバックス、効率性重視のドトールコーヒーに次ぐ国内3位となり、2016年に株式上場を果たした。

繁盛店を作るのは、そんなに難しいことじゃない、と加藤氏は語る。お客さんの立場で考えて、他店よりも魅力のある点を1つでも増やすこと。飲食のボリュームが多いとか、座席が落ち着けるとか、それを地道に行えば、常連客は増える、と、コメダ珈琲店創業者の加藤太郎氏は述べている。

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