そのケースで、便利な言葉として「仮に~」があります。いったん料金に関する話を横に置き、「ところで、仮に、〇月まで納期を伸ばすとすると、どうでしょう」「仮に支払いサイトを短くすればどうですか」と、ほかの条件について、仮の話として軽く話題を振ってみます。
「仮に」のよいところは、こちらにとってあくまで仮の話であり、そこでいくら突っ込んだ発言をしても、言質を取られるわけではないということです。自分の立場を表明せずに、相手のニーズを探ることができます。
ここで「まあ、納期が長ければ別にできないことはないんだけど」などと、ぽろりと隠れたニーズが表れることがあります。もし、こちらに、そのニーズを満たす用意がある場合、改めてその条件を含め打診してみると、話は再び動き出します。
相手が考える要望、ニーズの情報は、交渉において最も武器になるもの。相手のニーズがわかればこちらのカードも増えます。人は前に言ったことと矛盾する行動をとりにくいという「一貫性の法則」がありますので、「仮に」の話での発言は、心理的に人を拘束します。
交渉が膠着状態に入り、「これはなかなか動かなそうだな」と感じたら、自分の要求をひたすら通そうとするのではなく、相手に膠着している論点以外のことで本音を語ってもらう工夫をすることが大切です。
「仮に話法」は、その際のきっかけになってくれるかもしれません。
今回は、ここまでです。
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