WH買収で底なし沼へ
だが、本当に深刻な事態はその後にやってくる。2006年、西田社長時代に約6,000億円とも言われる金額で買収したアメリカ原子力メーカー・ウエスチングハウス(WH)でも、巨額の赤字を抱えていることが分かってきたからだ。WHの買収によって東芝は原子力事業を半導体と並ぶ将来の経営の柱とすることを公言し、世界から30基以上の原発の受注を取れると見込んでいた。
しかし、アメリカの原子力発電所建設の過程でWH関連子会社の工期が遅れ、その遅れによって生ずる損失は東芝が責任を負う契約となっていたため、7,000億円を超す赤字が見込まれることになってしまったのだ。
好調半導体分野も道連れに
その結果、債務超過のおそれも出てきたため、世界で2位のシェアを誇り年間1,100億円の利益を生み出す稼ぎ頭であった半導体部門の分社化と、株の放出に手をつけざるを得なくなってきたのである。こうして、東芝の今後の事業の核となる原子力分野と半導体部門はズタズタになってしまった。将来の成長分野とみた2分野。特に半導体部門の分社化、株売却は苦渋の決断だったようだが、債務超過を防ぎ、とにかく資金繰りを確保するにはやむを得ない処理方針だったようだ。
しかし、当面の資金繰り確保が出来たとしても今後の成長の柱を失ってしまえば、再生・再建の足がかりをどこにつかむか。その将来も厳しいものになると予想される。