赤字1兆100億円の衝撃。死に体「東芝」はどこで踏み外したか

 

東芝は3月29日、巨額の損失を抱え同社の経営を悪化させていた子会社の原子力メーカー・ウエスチングハウス(WH)がアメリカの破産法適用の申請を行った影響で、今年度の決算の最終赤字が1兆100億円になる可能性があると発表しました。我が国を代表する大企業は、どこで道を誤ったのでしょうか。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』の著者・嶌さんは、東芝の栄光から転落までを振り返るとともに、日本における「買収ブーム」の危険性についても言及しています。

東芝の凋落に何を学ぶか M&A経営の落とし穴

東芝の凋落は、産業界だけでなく世間一般にも大きな衝撃を与えている。折り紙つきの超優良企業とみられていても、経営判断のミスからあっという間に転落してしまう事実をまざまざと見せつけたからだ。

東芝といえば、テレビや半導体、重電機、軍事・防衛関連、鉄道車両など家電から重電に至る総合電機メーカーとして、日本を代表する超優良巨大企業だった。1930年代から冷蔵庫、洗濯機、掃除機などの国産化製品を次々と生産、その後も電子レンジ、炊飯器など白物家電など日本人の家庭生活、ライフスタイルを変革する製品を作り、日本の生活文化をリードしてきた企業だった。

その東芝が2015年に明らかになった粉飾決算をきっかけに一挙に転落への道をたどっている。わずか2年前のことながら、当初は白物家電事業の一部の売却で収拾するとみられていたが、東芝事業の両輪を支える半導体事業、原子力事業にまで及ぶ深刻な経営問題にまで発展してしまったのだ。

発端は2015年決算から

不祥事が発覚したのは2015年の決算からだった。決算発表の延期と配当の見送りを決め、第三者委員会が調査報告書を提出したところ、会社で「チャレンジ」と称して架空の売り上げや利益水増しの粉飾が明るみに出た。このため田中久雄社長や前社長の佐々木則夫副会長、さらにその前の西田厚聰元社長ら直近の3社長と経営陣9人が引責辞任し、東芝株は東証によって特設注意市場銘柄に指定されてしまった。まさに、あれよあれよという間に名門東芝は傷だらけの企業になってしまったのである。

2016年になると7,191億円の営業赤字と4,832億円の最終赤字を出すに至り、資金繰りまで苦しくなって3月までに白物家電、医薬品事業、映像事業などを次々に売却従業員約1万人のリストラにまで及ぶこととなる。

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