米軍はいつでも武力行使ができるわけではない―大学特任教授が解説

 

 

米陸軍は1956年の時点で「陸戦法規に関する野戦教範」を定めていたが、米軍はベトナム戦争後、ソンミ村虐殺事件のような戦争犯罪の再発を防ぐため、より一層、作戦法規を重視するようになった。国防総省・米軍は、

  1. 軍事的必要性
  2. 軍事目標と非軍事物の区別
  3. 軍事的利益と巻き添えとなる被害の比例性
  4. 不必要な苦痛の回避

という同教範の原則に基づいて、近年の実戦経験に基づく膨大な作戦法規マニュアルを作成し、公開している。

旅団級以上の司令部には法務部があり、作戦法規に基づいて交戦規定を定める。米海軍省法務部を描いた1995~2005年のテレビドラマ「JAG」(邦題「犯罪捜査官ネイビーファイル」)には、交戦規定を取り上げた回もあるほどだ。

なお、米国防総省は6月12日、1956年の「陸戦法規に関する野戦教範」にかわる1,204ページの「戦時国際法マニュアル」を刊行した。同マニュアルは「軍事的必要性人道名誉という3つの相互に依存する原則が、戦時国際法の比例性や区別といった原則、条約、慣習法の基礎である」と述べている。

日本の国会での平和安全法制の議論が、このような米軍の現状を踏まえたものになれば、少しはリアリティを備えたものになるかもしれない。

image by: Shutterstock

 

『NEWSを疑え!』第416号より一部抜粋

著者/小川和久(軍事アナリスト)
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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