日本のタクシー業界は「白タク解禁」で駆逐されてしまうのか?

 

既存のタクシー会社は破壊的イノベーションに対してどのように対抗できるのか?

さて、来るべき業界の大変革に備えて日本のタクシー会社はどのような戦略で生き残りを図るべきでしょうか?

大きく分けて2通りの戦略が考えられるでしょう。

まず一つ目はとことん付加価値を追求していく差別化戦略

もはや、“通りを流して顧客を拾う”という従来のビジネススタイルでは事業が立ち行かなくなることは火を見るより明らかです。

そこで一人一人の顧客のニーズを深堀りして徹底的に応えていくサービスを提供していかなければならないのです。

特に最近では将来に危機感を抱いた多くのタクシー会社でユニークなサービスが展開されています。

たとえば、子育てに手間のかかる家庭の負担を軽減するために特別な研修を受けたドライバーがチャイルドシートやジュニアシートなどをタクシーに備えて対応する「子育てタクシー」や、事前登録を行った妊婦の顧客に対して急に陣痛が始まった時など、不測の事態に迅速に対応できるよう専門の研修を受けた乗務員を配属する「マタニティ・タクシー」など、比較的ニッチなマーケットで顧客の“かゆいところに手が届くサービスを提供するタクシー会社が増えてきているのです。

実際に日本交通では、事前に住宅や電話番号、出産予定の病院などを登録すれば、陣痛時に優先的に配車する「陣痛タクシー」の登録者が2017年3月末現在、累計でおよそ12万人にまで達したそうですし、国際自動車の陣痛時から乳児検診まで使える「マタニティ・マイタクシー」は2017年4月末現在で累計8万4,000人に達するなどビジネスとしての大きな広がりを見せています。

また、日の丸交通の「子育てタクシー」も月間予約件数が前年同月比2倍に迫り好調に推移するなど、差別化戦略が確実に結果につながっている状況が見て取れます。

このような差別化戦略に対し、もう一つの戦略は、徹底的にコストの優位性を追求するコストリーダーシップ戦略になります。

前にもお伝えしたようにタクシー業界では、コストのほとんどを人件費が占めています。

そこで日本のタクシー会社においても、トヨタなどの自動車メーカーと連携して自動運転の実用化を早期に実現することが期待されているのです。

加えて、人工知能(AI)とビッグデータを駆使して、たとえば、金曜日の夜の銀座で雨が降った場合はタクシー利用が高まるなど、いつ、どこで、どのような条件下で利用があるのかという需要の先読みを行って、自動運転のタクシーを運行することができれば、燃料費も究極まで削減することが可能となり、現在のように初乗り410円という安い運賃でも高い収益を上げられる仕組みを築き上げることが可能になるでしょう。

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