安倍首相は、今の政治課題とは無関係であるはずの民主党政権を引き合いに出して、自民党をアピールした。2012年に民主党から政権を奪還したとき、投開票前日に同じ場所で演説したことを思い出したのだろうか。
鳩山政権、菅政権の間に日米同盟の信頼が崩れた。外交安全保障を立て直すために私たちは国家安全保障戦略をつくり、安保法制を成立させました。これによって日米の絆は強くなった。
お得意のセリフである。だが、麻生内閣における東京地検特捜部が政権交代を阻止するため、当時の小沢一郎民主党代表に無理筋の捜査を仕掛けたことが、民主党内の分裂を呼び、政権が終わるまで尾を引いたことを忘れてはならない。
安倍首相は選挙への逆風をこう表現した。
連日の報道によって、「自民党何やってるんだ、しっかりしろ」と厳しいお言葉をいただいています。
「報道によって」。これが彼のいちばん強調したいところだ。
稲田朋美防衛大臣が「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と応援演説し、公職選挙法や自衛隊法などに違反したことさえも、それを伝えるメディアのせいにしたいらしい。
通常国会閉会後の記者会見で、安倍首相は「この国会では建設的議論という言葉からは大きくかけ離れた批判の応酬に終始してしまった」と語った。森友、加計疑惑、共謀罪法案などについて、政府が説明しようとせず、情報を隠ぺいし続けたからこそ、議論が進まなかったのではないのだろうか。
またこの会見では「信なくば立たずであります。何か指摘があればその都度、真摯に説明責任を果たしていく」と日頃の言動と真逆のことを述べたが、誰も信じてくれないだろう。
この不誠実きわまりない総理大臣に、直接思いをぶつけようという人々が、会場となった秋葉原駅前に集まるのは、ごく自然なことだ。
「安倍辞めろ」「安倍帰れ」コールがしだいに盛り上がっていく。安倍首相はこれに激しく反応した。
あのような演説を邪魔するような行為を自民党は絶対にしません。
ヤジを罵るいつもの国会答弁と同じだ。お友達には権力乱用で優遇するくせに、批判する人々には敵意をむき出しにする。こうした幼児性は政権中枢全体に広がっている。