安倍政権の特徴は、官邸を中心とする寡頭支配だ。
対立的意見を進言する人材を登用せず、忠臣ないしイエスマンで固め、国会の圧倒的多数を占める自民党議員を強権的な人事やカネの配分で従わせている。
実はこの少数支配体制にこそ、安倍政権の死角があることに、気づいていないのではないか。
昨今さかんに指摘される安倍チルドレン、二回生議員たちのレベルの低さはもちろんのこと。自民党にとってもっと深刻なのは、数を擁するだけで、中心の外側が空洞化していることだ。
陣笠ばかりが目につき、異論がオモテに出てこない。村上誠一郎氏が一人気を吐いていたが、これまでは多勢に無勢だった。
しかし、都議選の惨敗で、党内の他の議員からも批判の声が少しずつ上がってきた。たとえば、都議選の結果が出た後、後藤田正純議員は自らのフェイスブックにこう書いた。
自由民主党執行部はおかしくなってると感じたのは、私の安倍政権の反省についての街頭演説が、安倍批判をしたと、党幹部に伝わり私にクレームがきたこと。…このような密告、引き締め、礼賛、おかしな管理をしている、今の自民党執行部をみると、結果は仕方ないと思わざるをえません。
石破茂、岸田文雄、野田聖子といったポスト安倍をねらう実力者たちは、メディアの質問に答える形で安倍首相との考えの違いを語っているが、まだまだ遠慮がちである。
自由にモノが言えない党内の雰囲気に加え、官邸や党本部の記者クラブに詰める若手記者たちが安倍側近に睨まれるのを恐れ、あえて記事にしようとしないのも不幸の一因だ。
このような状況のなかでは、議員の意識は国家国民を離れ、自己本位となる。安倍首相や、菅官房長官らに気に入られることがなにより。そして金集めさえ、ぬかりなくやっておけば、怖いものはないという、国民の代表とはおよそ言いがたい「心の罠」に落ちてしまう。
いわゆる「二回生議員」の不祥事の数々や、小渕優子氏、甘利明氏ら「世襲議員」の金銭疑惑は、つまるところ同根ではないか。
下村氏や稲田防衛大臣の問題にしても、「アベ友」の甘えが生み出した例であろう。
稲田大臣の場合は、司法試験に合格して弁護士の資格があるというが、実際には法律を理解していないことを自ら暴露してしまった。
もし、安倍首相が稲田防衛相を例の発言直後に、今村雅弘前復興相と同様、ただちに罷免しておけば、都議選の結果は多少なりとも違っていたかもしれない。