白木屋モンテローザの業績が急激に悪化。「鳥貴族」旋風が追い打ち

 

ここで、売上高の減少と店舗数の減少の関係を見てみます。冒頭で示した通り、17年3月期の売上高は前年比で27.0%も減少しています。そして、横ばいで推移していた店舗数は17年1~3月で全体の4.9%にあたる100店が減少しています。

売上高の減少の割合(27.0%)と店舗数の減少の割合(4.9%)を比べると、売上高の減少の割合の方が圧倒的に大きいことがわかります。また、店舗数の大幅減少は決算期の最後の方で起きています。よって、店舗数が減ったから売上高が減少したというよりは、売上高が減少したから不振店を閉鎖し店舗数が減ったと推測することができます。つまり、戦略的に店舗を閉鎖しているというよりも閉鎖せざるを得ない状況になっていると考えられるのです。

ところで、モンテローザは成功した競合他店を模倣することで知られています。居酒屋「和民」を模倣したような「魚民」、地鶏居酒屋「塚田農場」と似たような「山内農場」、居酒屋「月の雫」に類似した「月の宴」を展開しています。そして、焼き鳥居酒屋「鳥貴族」に似た「豊後高田どり酒場」を16年7月にオープンしました。

モンテローザは類似店を出したことで訴訟を起こされるなど、物議を醸しています。このことについては賛否両論あると思いますが、ここでは事の是非はさておき、この豊後高田どり酒場が業績回復の切り札になる可能性があることを指摘しておきます。

豊後高田どり酒場は自社生産鷄豊後高田どりを使用した焼き鳥を提供することを売りにしています。280円(税別、以下同)の均一価格(焼き鳥は2本)で提供しています。店舗数は現在54店となっています。

一方、鳥貴族は豊後高田どり酒場と同じく280円均一価格(焼き鳥は2本)を売りとしています。現在、500店超を展開し、18年7月期第3四半期決算の売上高は前年同期比21.8%増の213億円と目下の業績は好調です。

鳥貴族は85年に1号店が誕生しました。98年に10店、08年に100店、12年に300店、16年に500店を達成しました。近年急激に店舗数が拡大しています。鳥貴族は増収増益を続けている状況で、鳥貴族に似たような業態店を出せば儲かるとモンテローザが判断したとしてもなんら不思議はないでしょう。

もっとも、鳥貴族と似たような業態店は豊後高田どり酒場だけではありません。「鳥二郎」は270円均一価格(焼き鳥は2本)で、豊後高田どり酒場や鳥貴族よりも低価格です。鳥二郎は鳥貴族からロゴマークやメニューがよく似ているということで訴訟を起こされた経緯があります(その後和解)。店舗数は現在20店となっています。

ワタミの焼き鳥居酒屋「三代目鳥メロ」も豊後高田どり酒場と似たような業態店で、1号店の誕生は共に16年7月です。現在88店を展開しています。ビールが199円と驚異の安さを誇っています。メニューの価格は均一ではなくバラバラで、例えば鶏皮串などは1本が150円となっています。

牛角などを傘下に収めるコロワイドは焼き鳥居酒屋「やきとりセンター」を運営しています。価格は280円(焼き鳥は2本)が中心です。現在34店舗を展開しています。

塚田農場を運営するエー・ピーカンパニーは焼き鳥居酒屋「やきとりスタンダード」を展開しています。串の種類によって価格は異なりますが、1本が120円からで低価格を売りにしています。

このように、様々な焼き鳥居酒屋が勃興しています。背景には市場の拡大があります。人々の健康志向が強まり、脂分が少ないとされる鶏肉を使った料理の人気が高まっています。肉料理の中でも鶏肉料理は比較的低価格なことも、節約志向を強めている消費者の支持を得ている理由となっています。

市場の拡大を追い風に鳥貴族は成長しました。そして、その状況を見て各社が続々と参入しています。鳥貴族は高い利益率を確保している状況で、営業利益が売上高に占める割合を示す売上高営業利益率は、16年7月期が6.5%、15年7月期が6.0%と高く、かつ近年は上昇傾向を示しています。焼き鳥居酒屋の利益率の高さのほどがわかります。

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