トランプ大統領が右腕「バノン首席戦略官」をクビにした皮肉な理由

 

なぜ解任された?

バノンさんは、大統領候補時代のトランプに最も影響を与えた人物でしょう。バノンさんは、「反グローバリスト」で「アメリカ第一主義者」。移民の制限や、保護主義的経済政策を主張してきました。それが「グローバリズム」「新自由主義」「テロ」などに飽き飽きしていたアメリカ国民に受けた。そして、トランプは、当選しました。では、なぜバノンさんは解任されたのでしょうか?

BBC News 8月19日から。

移民受け入れや人種対立などについて強硬策を進言してきたバノン氏は、トランプ氏の長女イヴァンカさんやイヴァンカさんの夫、ジャレッド・クシュナー氏のほか、トランプ政権内でも穏健派とされる幹部と対立を繰り返していたと言われている。

要するに、イヴァンカさんやクシュナーさんと対立したからだと。バノンさんは、彼らのことを「グローバリストだ!」と批判していたそうです。

トランプさんの立場に立ってみましょう。バノンさんは、確かに大統領選での勝利に大いに貢献した。しかし、一緒に仕事をしたのは、2016年8月から1年間です。

一方、イヴァンカさんは、自分の娘。クシュナーさんは、その夫。「身内をひいきするのは悪い」と、私たちは思います。確かにそうなのですが、トランプさんは、「そういう人」なのです。

バノンは、アメリカを孤立させた

もう一つ、非常に重要なポイントがあります。バノンさんの、「アメリカ・ファースト」。このスローガンは、明らかにトランプ勝利に役立ちました。そして、トランプは、大統領になってからも、「アメリカ・ファースト」をつづけた。それで、トランプとアメリカは、世界で孤立することになった。

たとえば、「アメリカ・ファースト」のバノンさんは、「パリ協定離脱」を主張し、トランプはそうしました。このことは、世界中で大いに批判され、アメリカは孤立した。一方、習近平は、「パリ協定を絶対支持する!」と宣言し株をあげた。これは、何を意味しているのでしょうか? 「ナショナリズム的主張は世界での孤立を招く」ということ。他の人の例をみれば、すぐわかります。

安倍総理は、就任当初「日本を取り戻す」などといっていた。それで、欧米で「ソフトファシスト」などと批判され、方向を修正しました。

習近平は、「中国の夢」などと語っていた。それで、グローバリストに嫌われ、中国経済がボロボロになってきた。今年からは、「グローバリズム絶対支持!」「核兵器のない世界をつくる!」「パリ協定絶対支持!」などと主張。軌道修正し、グローバリストと和解しています。

そう、バノンさんの主張は、大統領選では役にたった。しかし、その路線を大統領になった後も続ければ、必然的にトランプとアメリカは孤立することになる。実際、欧ロなどのメディアをみると、「世界で最も孤立している2人の指導者、トランプと金正恩が、朝鮮半島でケンカしていて迷惑だ」などと報じられています。

バノンは、中国の脅威を、はっきり認識していた

しかし、バノンさんには、良い点もありました。彼は、「アメリカ最大の敵は中国である」とはっきり認識している。8月17日付AFP=時事に彼の言葉が載っています。

米政権内で対中貿易における強硬路線を主張する自身の闘いに言及し、北朝鮮問題での誠実な仲介役を中国に期待するというわなに陥ってはならないとして、「われわれは中国と経済戦争の最中だ」「われわれのどちらかが25~30年後に覇権を握る。このまま行けば彼らの勝ちだ」などと持論を展開。北朝鮮問題も「彼ら(中国)がついでにわれわれをつついているだけだ。一つの前座に過ぎない」と語った。

短いですが、非常に重要なことを話しています。まず北朝鮮問題について。「中国に誠実な仲介役を期待するな」「中国がわれわれをつついている」つまり、「北朝鮮問題の黒幕は中国だ!」と主張している。RPEの立場は、「中国にとって北朝鮮は『緩衝国家』なので、事実上黙認している」です。

そして、バノンさんは言います。「われわれは中国と経済戦争の最中だ」「われわれのどちらかが25~30年後に覇権を握る。このまま行けば彼らの勝ちだ」。そう、バノンさんは、「中国こそが主敵であること」を、おそらく誰よりもはっきり認識している。

一方、クシュナーさんは、ビジネスの繋がりがあるため、ここまで中国に強硬になれない。中国はバノンさん解任を大いに喜んでいることでしょう。

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