【書評】ステイタスの代償。タワーマンション住民が難民になる日

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続々と建設され続ける高層マンション。眺望の良さなどから変わらぬ人気を誇っていますが、巨大地震に襲われた際には「地獄のような生活」を強いられる可能性が高いようです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、高層マンションが被災した際の恐ろしさが綴られた一冊。「高層難民」にならないために打つ手はあるのでしょうか。

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高層難民
渡辺実・著 新潮社

渡辺実『高層難民』を読んだ。10年も前の本だが内容は古びていない。近い将来、大都市が巨大地震に襲われる可能性が高くなっている。そのとき避難所難民帰宅難民、そして高層難民という三大難民が発生する。

「天空の極楽にいたはずの高層マンションの住民は、一瞬にして襲ってくる大地震の直後に、下界から孤立する高層難民になって、地獄を体験するでしょう」という著者の断言は理解できる。最近の高層マンションには、地震の揺れをできるだけ小さくする技術が使われているのだが、長周期地震動に対しどのような効果があるのかは不明だ。建物の破壊が免れたとしても大問題がある。

高層マンションでは、上下移動に欠かせないエレベーターがライフラインになる。大地震でエレベーターは使えなくなり、復旧まで何日もかかる可能性がある。運悪くエレベーター内に閉じ込められた場合、最悪数日間、救出が来ないことを覚悟しなければならない。そんなときの最大の問題は排泄だ。おそるべき地獄になる。

エレベーターがいつ復旧するかが、高層マンション住民の運命を決める。地震発生直後から、相当な期間、下界から孤立した高層難民になり、彼らが救援物資などを取りに行くにも、階段を使うしかない現実が待っている。わたしも防災訓練で、マンション15階まで階段で往復したことがある。エレベーターの復旧は官公庁から始まるが、マンションは恐らく最後のほうであろう。

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