【書評】ステイタスの代償。タワーマンション住民が難民になる日

 

著者はテレビ番組で高層マンション住民に協力を得て、階段での上下移動をシミュレーションしてもらった。現実に、10階以上の住民は地上との最初の1回の往復はなんとかがんばれても、水などの荷物を持っての再度チャレンジは、老若男女を問わずほとんどの人がギブアップした、という。これを毎日繰り返すとなると、せいぜい5階までが限界、それ以上の住民の上下移動は不可能である。

国も地方自治体も「災害時の非常用食料の備蓄は3日分を」と言っている。3日もすれば行政や周囲から避難所に食料が提供されるシステムができているからだ。ただし、これは地上にある避難所の地上の人の話である。

高層難民は階段で降りて、食料をもらい、階段を上って住居に戻らなければならない。食料は衛生上の問題から、まとめて数日分といった配給はしない。3食その都度の配給になる。つまり高層難民はライフラインが復旧するまで、毎日毎食ごとの階段上り下りが必要になる。できるわけがない。

まあ、高層階の人は、ライフラインが復旧するまでマンションから脱出して、避難所で生活することがひとつの解決方法かもしれないが、避難所の収容人数はマンション住民は数に入っていないと思われるから(食料の配布もそうかも?)無理でしょう。って、救われないじゃん。だから、最低でも半月分以上の備蓄が必要なのだ。

著者による5階建て理論では、5階ごとに災害時に自立するための水、食料、災害用トイレなどの備蓄を薦めている。どの階の住民も最大で4階分の上下移動で必要な物資が得られる。わがマンションでは備蓄は公的な備蓄はしないと宣言してきたが、この理論を知って1階、6階、11階に備蓄もありかなと思うようになった。エレベーター内の災害時対応ボックスの設置も再提案しなければなるまい。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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