たまごかけご飯用の卵『とくたま』はなぜ6玉218円でも売れるのか

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たまごかけご飯好きのための卵「とくたま」が、ひそかな人気を集めています。しかし、使い方を限定することは、購入者をも限定してしまうことにつながらないのでしょうか。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、「とくたま」がなぜ成功できたのかその秘密を探るとともに、同商品の今後の展望を分析しています。

コモディティ化からの脱却

人気が高まっている「たまごかけご飯用の卵」を分析します。

● JA全農たまごが展開している、たまごかけご飯に合う卵「とくたま」にフォーカスをあてます。

戦略ショートストーリー

たまごかけご飯が好きな方をターゲットに「全農グループの総合力」や「特許を取得した飼料」に支えられた「たまごかけご飯に合う」等の強みで差別化しています。

たまごかけご飯に特化したたまごを提供するだけでなく、たまごかけご飯以外の使い方も発掘することで、用途を拡大し、幅広い層の顧客の支持を得ています。

分析のポイント

コモディティ化からの脱却

顧客が商品の購買を決める際に、重視する要素のことを購買決定要因(KBF:Key Buying Factor)と言いますが、たまごの場合、顧客がスーパーに並んでいるたまごを見て、何を重視するかというと、多くの方が価格をあげるでしょう。

たまごは特売にもなりやすいですし、顧客はたまごの価格に敏感です。多くの顧客は、どのたまごを買っても大きな差があるとは思っていないでしょうから、価格を重視してしまうのも仕方がないといえます。

たまごは、コモディティ化している代表的なものですので、たまごを作る側としては、差別化が難しい商品であるといえますし、価格抑制の圧力がかかりますので、薄利は避けられません。しかし、「とくたま」はそういった状況を打開することに成功しています。

最近は、通常のたまごよりも栄養価を高めたたまごなどが店頭に並んでいるのは見かけますが、「とくたま」は「たまごかけご飯にかけるもの」として使い方を限定したことにより注目されています。

○○専用のように使い方を限定したたまごは、恐らく前例がないと思いますし、一般的なたまごとの違いは明らかですから注目されるのもうなずけます。そして、6玉で218円(希望小売価格)とやや割高な価格設定からもわかるとおり一般的なたまごとは一線を画しているといえるでしょう。

要するに「とくたま」は差別化が難しい商品であるたまごの使い方を限定することで、差別化を実現しているということです。使い方を限定すると、顧客が減ってしまうことを心配されるかもしれませんが、特にコモディティ化している商品は大衆に合わせたままでは、注目を集めることはもちろん、差別化は難しいです。

そして、「とくたま」の場合、使い方を限定することによる顧客減少の懸念を払しょくすることを意図しているかはわかりませんが、新たな顧客獲得に動いています。

料理専門のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のSnapDish(スナップディッシュ)にてモニター募集などを行うことで、「とくたま」を使った多数の料理が紹介されているのですが、これにより期待できる効果がたまごかけご飯以外の使い方の発掘です。

つまり、「とくたま」の強みである「濃厚な味」や「ねっとり感」を活かした新たな使い方を探すことで、より幅広い層の顧客獲得につなげることを狙っていると思われます。顧客は、メーカーが思いもしない使い方をすることがありますのでそういった新たな使い方を見つけられれば、新たな顧客獲得に動くことができるわけです。

上記の「とくたま」のように、使い方を限定してから広げるというのが重要なポイントだと思います。なぜなら、最初から広げる、つまり大衆を狙っていては既存のたまごと同じで、コモディティ化からの脱却は難しいですが、使い方を限定することで、コモディティ化を脱却し、既存のたまごとは違う、差別化されたブランドとして顧客に認知されてから新しい使い方を提案することができれば新たな顧客を獲得することにつながるためです。

全国展開も視野に入れているようですが、今後、「とくたま」が世の中にどのように受け入れられていくのか注目していきたいです。

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