息子の兵役が決定した、在アラブ日本人母「意外な」胸中

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アラブ首長国連邦に嫁いで20余年の日本人女性・ハムダなおこさんが、驚きの連続なアラブ生活を綴ったメルマガ『アラブからこんにちは~中東アラブの未知なる主婦生活』。2014年にドバイ首長が兵役制度を導入し、なおこさんの17歳の三男が兵役に就くことに! 今回は、なかなか知る機会のないアラブの兵役制度について詳しく解説しています。そして、息子の兵役が決定した日本人母の胸中とは…。

息子、兵役に行く

17歳の三男が兵役に就きました。
UAEでは今年(2014年)の年頭に政府発表があって、18歳以上30歳以下のUAE国民男性は、兵役が義務となりました。期間は、高校卒業者なら9ヶ月、高校を卒業していない者は2年間です。

兵役を導入した理由について、
「兵役は、我が国の若者たちに忠義と忠誠心を植え付け、秩序と鍛錬と国に対する奉仕を教える、最も優れた方法である」とドバイ首長(UAE首相)は述べています。
「UAE国民は、国を発展させていくと同時に、その独立と主権を守るという聖なる義務がある。しかし、それはあくまでも祖国が獲得してきたものの保護と保全を目的とする」。
そして、こう結んでいます。
「わが息子たちよ。国をここまで発展させた先人への恩を忘れず、その保全に奉仕するのは若者の義務である。きみたちは国の現在と未来を引き継ぐリーダーであり、保護者であるのだ。我々はきみたちを支援していく。」

その発表後、国中でディベートが起こりましたが、大方は賛成の意見でした。国民の意思を代表する国民評議会からも、きちんと法整備するように要請が出され、市井の国民からも歓迎ムードが漂います。しかし、その後は何の追記事もなく、詳細はまったく不明でした。いつ始まり、どこで誰が何をやるのか、何一つ決まっている感じがありません。軍事に関わることを軽々しく公表しないのは当然としても、本当に始まるのか、それはいつなのか、誰も予想できませんでした。

しかし、ドバイ首長であるシェイク・ムハンマドが始めたなら、とにかくうやむやに胡散霧消することはないと考えていました。
シェイク・ムハンマドは不可能と思えることを可能にする天才で、砂漠の真ん中に世界一高いビルを建てたり、海に月からも見える人工島を出現させたり、人が「まさか」と思うことを現実に作り出す魔術師のような政治家です。
だから、若者たちを兵役に就かすことくらい簡単で、誰にも文句を言わせず、かえって親たちに感謝されるくらい立派にやってのけるだろうと考えていました。

6月には国会で義務兵役が承認され、ガイドラインが発表されました。対象は18歳から30歳までのUAE国民男子。期間は、高校卒業者が9ヶ月間、高校卒業してない者は2年間。
在職中の兵役なら休職扱いにされ、基本給が支払われること。兵役期間も退職金や年金に加算されること。兵役終了後、同等の仕事を保障され、兵役はボーナスの対象にも昇給の目安にもなること。兵役を終えた者から優先的に、政府関係の仕事の就職、結婚祝い金の支給、政府が無償で与える住宅用の土地の分配、奨学金が与えられることなど。

罰則も定められ、18歳以上29歳までの健康なUAE男性で、正当な理由も無く兵役に登録しなかった者は、1ヶ月から1年の投獄に加え、1万から5万ディラハム(30万円から150万円)の罰金を課されるとあります。それだけでなく、結局は30歳を過ぎても兵役に就くことを義務付けられます。その代わり、兵役につけない人、あるいは就かなくてよいカテゴリーも言及されました。

UAE女性でも、18歳から30歳までの希望者は兵役に就くことができ、保護者の了解があれば登録できます。その場合、期間は学歴に関わらず全員が9ヶ月間です。
兵役期間、青年は国内の5ヶ所のキャンプで訓練を受け(女性はアルアインの1ヶ所)、その後「予備軍」として国に登録されます。

法が発表されてからは、国民からも多くの期待が寄せられました。
「軍隊教育を通して、肉体的な力と忍耐、知識と精神を養うことができる」、
「将来市民生活を送るのに必要な秩序と規律を習得することは、本人の大きな財産となる」、
「若い国民が国家保全の活動に参加することは重要で、国への最大の奉仕である」。
加えて、
「サイバー中毒の若者を現実に引き戻す大きな手助けになるだろう」という意見まで載っています。

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