米中が開戦したら…武力衝突を避けるため日本がすべきこと

 

6. 米軍の対水上戦能力
中国の2017年の揚陸能力は1996年の2倍に達するとみられるが、米軍は2017年の時点でも、中国の揚陸艦艇の40パーセントを潜水艦だけで7日間以内撃沈可能と予測される。

7. 中国の宇宙システムに対する米国の攻撃能力
米国は2004年になって通信衛星妨害システムの配備を始めた。有事にはイージス弾道ミサイル防衛システムなども、中国の宇宙システムを攻撃・妨害するために転用することができる。

8. 米国の宇宙システムに対する中国の攻撃能力
中国は有事には米国の衛星を破壊することの戦略的リスクを避け、地上から妨害する可能性のほうが高い。

9. サイバー戦力
米国は国家安全保障局(NSA)の攻撃能力を投入することができ、防御能力中国より高い。しかしながら、実戦では双方が予期しない展開がありうるし、米軍の兵站用ネットワークはインターネット接続されているので脆弱である。

10. 核抑止の安定性
中国の核報復能力は、米国の第一撃に対して極めて脆弱だった1996年の状態から徐々に強化されている。米国核報復能力揺るぎない

報告書は以上の「得点表」に基づいて、中国側に戦争のリスクを過小評価させないための宣伝、兵器調達の見直し、東南アジア諸国の軍事基地を有事使えるようにするための関係強化などを、米政府に提言している。

日本にとってもっとも重要なのは、「中国の近くの拠点防衛は、単純に割に合わなくなる」「米軍は中国からさまざまな距離に位置する場所から行動する必要がある」という提言だろう。

中国が在日米軍基地攻撃能力を増強するなかで、日本が武力衝突を抑止するためには、平時から自衛隊飛行場と民間空港の復旧能力を高め、米軍による使用を準備したうえで、有事に米軍に使用させるかどうかは、武力衝突発生の経緯によって日本が決めると、中国側伝えておく必要がある。防衛力整備とならぶ外交力が試されることは言うまでもない。

(参考文献)
[1] Eric Heginbotham et al., The U.S.-China Military Scorecard: Forces, Geography, and the Evolving Balance of Power, 1996-2017 (Santa Monica, California: RAND Corporation, 2015). xl+389 pp.

静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之

image by: Shutterstock

 

『NEWSを疑え!』第430号より一部抜粋

著者/小川和久(軍事アナリスト)
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

 

 

  • 米中が開戦したら…武力衝突を避けるため日本がすべきこと
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け