没落する日本の家電業界で、ツインバード工業がV字回復できたワケ

ツインバード工業
 

以前掲載の「アイデア家電を次々と生み出す『ツインバード』は何が凄いのか?」でも詳しくお伝えしたツインバード工業の躍進。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では、著者で店舗経営コンサルタントとして活躍中の佐藤昌司さんが、専門家の視点で「ツインバード人気の理由」を分析しています。

アイデア家電メーカー「ツインバード工業」の業績がV字回復したワケ

頭皮洗浄ブラシ「モミダッシュ」などアイデア家電を開発する新潟発の家電メーカー、ツインバード工業の業績が好調です。

2017年3~8月期の連結純利益が前期比2.8倍の9,100万円でした。OEM(相手先ブランドによる製造)製品が堅調に推移し、売上高が計画を上回ったことや、製造費や販管費を計画よりも抑えたほか、投資有価証券の売却が寄与しました。

売上高は66億円で前期比1.8%減となりましたが、下半期に首に掛けて聴くラジオ「着るラジオ」や単身者向けの冷蔵庫・洗濯機を新規投入することもあって、18年2月期通期の業績予想は据え置き、前期比4.4%増の140億円を計画しています。

ツインバードは大手電機メーカーが参入しないニッチ家電市場を開拓することで頭角を現しました。「あったらいいな」と思える製品を開発していくことをモットーとしている家電メーカーです。

例えば「モミダッシュ」がその代表格でしょう。電動で動くゴム製のブラシで、頭皮の洗浄とマッサージが同時にできることを売りとしています。「シャンプーブラシ(頭皮ブラシ)を電動化してみてはどうか」という発想から生まれました。

モミダッシュは04年に発売されました。当初は宣伝をほとんどしなかったといいます。しかし、徐々に口コミが広がったことでニュースやテレビ番組でも取り上げられるようになり、結果として大ヒット商品となりました。

今年10月に発売した「着るラジオ」もニッチ家電と言えるでしょう。「ウォーキングしながらでも聴けるラジオがあったらいいな」という発想から誕生しました。首掛け式になっていて、耳元からでも聞こえるスピーカーを搭載し、イヤホンを通さずに音声を流します。耳や手をふさがないため、ウォーキングなど軽い運動や作業中でもラジオを聴くことができます。

こういったアイデア家電に改めて注目が集まっていることもあり、ツインバードの業績はV字回復しています。

連結決算に移行した12年3月期は連結売上高が150億円ありました。しかし、13年3月期は前期比17.4%減となる123億円にまで落ち込んでいます。

「おかあさんがうちわをあおいでいるようなやさしい風」がコンセプトの扇風機「コアンダエア」や、「テレビの音声が聴けるラジオがあったらいいな」という発想から生まれた「聴くテレビ」が好調だったものの、家電市場の低迷に抗うことはできませんでした。

14年2月期も引き続き低迷が続きます。売上高は111億円(約11カ月の変則決算)です。

しかし、15年2月期は状況が一変します。スティック型クリーナーやハンディスチーマーが好調に推移したほか、ワクチンなどを冷温保存できるポータブル冷凍・冷蔵庫「ワクチンクーラー」の大量受注があったため、売上高は133億円となりました。

ワクチンクーラーは国際宇宙ステーション(ISS)で使用されたツインバード製のポータブル冷凍・冷蔵庫を応用した製品です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)から依頼されて開発したポータブル冷凍・冷蔵庫は、13年に種子島宇宙センターから打ち上げられた「こうのとり」4号機に積み込まれ、ISSの日本実験棟「きぼう」に届けられ使用されています。

16年2月期と17年2月期はOEMの受注が拡大したこともあり、家電市況が厳しいなか、売上高はそれぞれ130億円台をキープすることができました。そして先述したとおり、「着るラジオ」や単身者向けの冷蔵庫・洗濯機の新規投入により、18年2月期は140億円になると見込んでいます。

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他社にはないアイデア家電や独自技術の製品が話題を集めたことで、ツインバードの業績がV字回復していると言っていいでしょう。多くの家電メーカーが苦戦しているなか、ツインバードは健闘していると言えます。

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