ところで、「そもそも論」からいって、この国有地は値下げして売る必要があったのか、それほどの欠陥(瑕疵)があったのか、という視点から、会計検査院の報告の甘さを指摘する声もある。
財務省近畿財務局長、美並義人氏を背任の疑いで11月22日、東京地検に告発した「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」の醍醐聰東大名誉教授らの「仮に地下埋設物が存在するとして、それが損害賠償を必要とする瑕疵に当たるか」という問題認識だ。
その主張によると、国と森友学園が交わした「国有財産売買契約書」に、確認された埋設物は「陶器片、ガラス片、木くず、ビニール等のごみ」のみで、校舎建設のための杭打工事に支障となるコンクリート片などは発見されていない、と書かれている。
大阪航空局の資料には、深さ3.8mまでに汚配水管、マンホール・アスファルト・コンクリートガラ等が存在したと記されているが、それらの撤去費1億3,100万円は国が森友学園に「有益費の支払い対象」として精算済みだった。
また、昭和59年の神戸地裁判決で、「地下に廃棄物が混入していたとしても、予定どおりのマンションを新築している場合には、瑕疵があるとはいえない」とされている。
「これに照らせば、近畿財務局は正常な売買交渉ではないことを十分認識しながら、瑕疵担保責任を故意に拡大解釈し、異常な廉価での売却を実行する背任を犯したと言わざるを得ない」というのが醍醐氏らの告発理由である。
会計検査院が長期間を要して調べるまでもなく、もともと森友学園に値引き販売するような土地ではなかったという主張だ。たしかに、テレビや写真に映し出された土の山を見る限り、工事に支障が出るほどの廃棄物があるようには見えなかった。
いずれにせよ、お堅いはずの財務省が、タダ同然で鑑定価格9億円をこえる国有地をたたき売ったのははっきりしている。森友以外には過去に全く例のない数々の特別条件で国有地売却が進められたのも今国会の質疑で確認された。この異常な出来事を説明するのに、総理夫人と森友学園の関係を抜きに語れるはずがない。
もとより安倍首相があからさまに特別扱いを指示しなくても側近や官僚に意思を汲み取らせる方法はいくらでもあるだろう。権力者のやり方はそんなものだ。
会計検査院の限界がわかっているからこそ、安倍首相はその調査を待ちたいと、野党の追及をかわしたのである。
国有地の不当廉売は財務省の一部局が勝手にしでかしたこととして幕引きをはかるつもりだろうが、このまま終わらせては野党の存在価値が問われよう。
いわゆるモリ・カケ問題について、安倍総理夫人や加計学園理事長らを国会招致するのを自民党はかたくなに拒否し続けている。これでは、疑惑が晴れるわけがない。
安倍内閣は真相解明から逃げることなく、少なくとも、この不適切な国有地売却を行った財務省の責任を明確にするため、大臣辞任を含めた人事的措置をとるべきではないだろうか。