トヨタは知っている? 急速な「EVシフト」に潜む不都合な真実

 

A Decade after DARPA: Our View on the State of the Art in Self-Driving Cars

自動運転技術を開発しているArgo AIのCEO、Bryan Saleskyによって書かれた、自動運転技術の開発の現状報告です。

注目すべきは、以下の段落です。

We’re still very much in the early days of making self-driving cars a reality. Those who think fully self-driving vehicles will be ubiquitous on city streets months from now or even in a few years are not well connected to the state of the art or committed to the safe deployment of the technology. For those of us who have been working on the technology for a long time, we’re going to tell you the issue is still really hard, as the systems are as complex as ever.

レベル4の完全自動運転を実現するためには、まだまだ超えなければならない技術的課題があり、後2~3年で商用化が可能なレベルには至らないだろうというコメントです。

これは、現在「自称レベル3」であるテスラのオートパイロットを使っている私の実感でもあり、2020年までにはレベル4を実現すると宣言している自動車メーカーよりは、実際に開発に関わっているBryan Saleskeyを信じたほうが良いと思います。

Tesla Model 3: The First Serious Review

Tesla Model 3で北米大陸横断(2860マイル)した人のレビューです。私もModel Xで長距離ドライブ(往復で2400マイル)をしたので分かりますが、長距離ドライブならではの問題点も出てくるので、とても読み応えのあるレビューになっています。

ほとんどの点で高い評価ですが、唯一の問題点として指摘しているのが、オートパイロットのUIです。Model S/Xと違い、Model 3は、ハンドルの上にあるコンソールがない上に、ハードウェアスイッチを極力排除しているため、オートパイロットがModel S/Xと比べて使いにくい、と指摘しています。

テスラは、近い将来にはレベル4(完全自動運転)を実現すると宣言しているので、Model 3のハードウェアはその時代に最適化したのではないかと筆者は指摘しています。

私の思うに、Tesla は Model 3の設計の際に、とにかく部品の数を減らして製造コストを下げることを最優先にしたため、これまでハードウェア・スイッチが担当していた仕事を(画面上の)ソフトウェア・スイッチで置き換え、かつ、コンソール・ディスプレイも排除してしまったため、こんな問題が出たのだと思います。

ソフトウェアなので、指摘されている問題の大半は、ソフトウェア・アップデートで対応できるように思えますが、「ハンドルの真ん中にディスプレイがないため運転中に目線を左右に動かす必要がある」という問題点だけは回避できないのが、少し悩ましいところです。

image by: Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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