時代錯誤のエネルギー政策を転換させねばならない。そのためには、国会に法案を提出し、国民的議論を呼び起こす必要がある。そういう動きが市民団体と政党の一部から出てきた。
全国の脱原発団体、自然エネルギー推進団体、合わせて207団体が加盟する連合体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(会長・吉原毅城南信金相談役)。いまだ一定の人気を保つ小泉純一郎元首相が最高顧問をつとめ、原発から再エネへの国策転換で新たな産業革命ができると訴えている。
1月10日、小泉氏も出席し、同連盟が「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の発表記者会見を開いた。法案の中身は概ね次のようなものだ。
- 原発を停止し今後一切稼働させない
- 廃炉計画を策定
- 原子力発電所の新増設は認めない
- 中間貯蔵及び最終処分の確実かつ安全な抜本的計画を国の責任で策定
- 燃料サイクル事業から撤退し、再処理工場等は廃止する
再エネの導入目標については年限を明確にした。
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の自然エネルギーを最大限かつ可及的速やかに導入する。自然エネルギーの電力比率目標は、2030年までに50%以上、2050年までに100%とする。
2050年で自然エネルギー100%と言うと、原子力だけでなく石油やガス、石炭の業界から反発が出そうだが、時代の変化に対応するのが企業の力量というものである。
原発ゼロでバランスシートが一気に悪化する電力会社への対応策も提言する。
電力会社が原発をやめられるよう、除却損を40年かけて減価償却するとか、損害についてはある程度、国民が負担する仕組みも必要だ。
(メンバーの河合弘之弁護士)
小泉氏は原発計画の非現実性について厳しく指摘した。
これまでほとんど原発なしでやってこれた。将来原発を20~22%というが、それだったら再稼働だけじゃなく(新たに)30基くらいつくらなければならない。できるわけがない。
原発ゼロこそが現実に即した計画であり、安倍政権の政策は誤っているという主張だ。
いずれ原発ゼロは実現する。国民の声をしっかり受け止めようという総理が誕生すれば。
そんな総理の誕生には、原発ゼロについての国民の覚醒が必要だ。そのために、国会に原発ゼロ法案を提出して、国民的議論をしなければならない。法案提出について、野党はもちろん、自民党にも呼びかけるという。
かりに立憲民主党が国会に出して積極的に政府をただせば、自民党も、うかうかしていられない。どの政党であれ、原発ゼロで一致すれば協力する。いちばん早いのは自民党が原発ゼロを決めることだ。選挙の争点になった場合、原発推進論のままで議席を確保できるかどうか自民党議員は必ず考える。
同同盟はこの会見の後、立憲民主党との対話集会にのぞみ、その模様は一般公開された。立憲民主党も原発ゼロ基本法案の提出をめざしている。中身を擦り合わせるという意味合いも、この会合にはある。