65歳で年金が3万2千円アップした人に、一体何が起きていたのか?

 

※追記

振替加算とは何なのか? 去年秋あたりに大規模な支給漏れで問題になりましたよね。自分が昭和41年4月1日以前生まれで、配偶者に厚生年金期間や共済組合期間、または両方で20年以上ある人は必ず気を付けておきましょう。

振替加算は以下の理由で支給されます。もうこれが全て。

配偶者に加給年金が付いていた場合、自分が65歳になると加給年金の代わりに老齢基礎年金に振替えて加算される年金。振替加算は生年月日が大正15年4月2日生まれ~昭和41年4月1日以前の人にしか付かない

なんでこんな事になっているのか。この経緯としては、昭和61年4月1日の年金大改正が関係します。昭和36年4月1日以降20歳になると厚生年金や共済年金に加入している人以外は原則としてみんな60歳までは国民年金に強制加入する事になりましたが、昭和61年3月31日までのサラリーマンや公務員の配偶者(専業主婦とか)だった場合は国民年金には強制加入ではありませんでした。

しかし、そんな配偶者も昭和61年4月1日を機に国民年金に強制加入となりました(このサラリーマンや公務員の扶養に入ってる配偶者を現在、国民年金第3号被保険者という)。

例えば、振替加算の付かない昭和41年4月2日以降生まれの人なら昭和61年4月1日以降の強制加入時点で20歳になれるから、国民年金に強制加入する60歳までは40年間完璧に国民年金保険料を納める事により、満額の老齢基礎年金(平成29年度価額779,300円)を受ける事が可能な年齢の人達です。

しかしそれより前に生まれた人、例えば昭和25年4月2日生まれの人は20歳になるのは昭和45年4月1日で、仮に20歳からサラリーマンや公務員の専業主婦(主夫)だと国民年金に加入してもしなくてもよくなりますよね。もし任意加入で国民年金に加入せずに、強制加入となる昭和61年4月1日を迎えるとこの時点で昭和25年4月2日生まれの人は36歳です。つまり国民年金を納める期間は60歳までは24年しかありません。

となると、いきなり昭和61年4月1日に専業主婦(主夫)を強制加入にして国民年金に加入させても40年満額の老齢基礎年金は受け取れないですよね。だから、せめて国民年金に加入していなかった期間の割合分の配偶者加給年金を支給して、低額になった老齢基礎年金を補おうというのが振替加算。

昭和25年4月2日生まれの人なら、振替加算額は配偶者加給年金224,300円×0.360(生年月日に応じた率政令で定めた率)=80,748円(年額)

加給年金額と振替加算額(日本年金機構)

もともとサラリーマンや公務員の専業主婦というのは、世帯で面倒を見る厚生年金や共済年金(共済は昭和61年3月31日までに受給権を獲得できた共済年金には加給年金付かない。加給年金制度が無かった)で家族手当のようなものとして夫に配偶者加給年金を支給して、将来その専業主婦が年金貰わなくてもその配偶者加給年金で妻の扶養負担分をカバーしていたんです。

でも記事の冒頭でも書いたように、国民年金に強制加入してなかったとしたら将来離婚をしたりした時に、その専業主婦だった妻には何にも年金が出ない事態になるから昭和61年4月に強制加入にして、自分名義で将来は国民年金(老齢基礎年金)が受け取れるように制度を変えたんですね。だから、任意加入で国民年金に加入してなかったと仮定したならば期間分に応じた配偶者加給年金を老齢基礎年金に振り替える形で、老齢基礎年金に加算して支給するのが振替加算なのです。

まあ、昭和60年時点で強制加入して納めてた1,800万人と合わせて745万人(国民年金制度が出来た昭和36年4月時点で強制加入1,488万人で任意加入は約220万人だった)くらい任意加入してたから、あんまし必要なかったかもしれないですね^^;。結構みんな積極的に保険料納めていたんですよ。

この不安定要素である任意加入の専業主婦の人達が国民年金財政を支えていたとも言われる。もちろん任意加入していた人も振替加算が生年月日に応じて加算されて、その分高い年金が受け取れます。

なお、配偶者自身に厚生年金期間や共済組合期間、または両方合わせて20年以上の年金がもらえる人は振替加算は付かない。また、離婚分割で厚生年金記録を分けてもらってそれが20年分以上になると振替加算は付かない

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
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