戦争準備だけでも十分に潤う米国政府、国防省、軍事関連企業
戦争に付随して莫大な金が動くというのは、はるか古代から知られていることであり、またブッシュ政権が軍需産業と関わりが深かったことは公然であろうからここでは省くが、要はただ米国においては、「戦争」は単に「戦争」という一面的な事象ではなく、「戦争準備」から「戦争開始・維持」「戦争終了・復興」までが一連の完結したビジネスモデルとして確立されているのかもしれない。独立戦争から始まり2つの大戦を経て、朝鮮戦争やベトナム戦争、キューバ危機、イラク戦争などを経験していく中で、軍産複合体が時代に即したビジネスモデルとしてマイナーチェンジを繰り返しつつも、基本的なビジネスモデルとしては大きく変わってはいないように思われるのである。
ここでいう「金儲け」をこの戦争というスケジュールに当てはめて下記にまとめると、戦争準備からお金を儲けることが可能なことが分かる。
1. 「戦争準備」段階では、当事国だけではなく、その緊張状態の影響を受ける周辺国にも軍需品を売りつけることができる。危機感を煽れば煽るほど、値段も物量も増す(日本への陸上型イージス・システムや高価なF35戦闘機の売り込みもこの一環か?)。これは軍事産業に限らず、その国の金融や経済システムにおいても優位に働かせることができる。なにせ、戦争開始時期を自分で選ぶことができれば、戦争によって起きる影響をコントロールすることが可能なので、その間の緊張状態を利用してビジネスをすることさえ可能である。
2.「戦争開始・維持」段階では、当然、多くの最新の武器、弾薬や機材が際限なく使用される。
3.「戦争終了・復興」段階では、米国に有利なような政治・経済システムを取り入れさせる。
この3つの段階を要素に取り入れ、作戦開始の当初から「どのようにして緊張状態を高めていくのか」そして、「どのように復興特需を起こすのか」という悪魔のような『シナリオ』を作るのである。
古畑氏の推論では、これは逆説的で飛躍的でもあり大変皮肉な推論かもしれないが、長年軍事関連の研究に携わった者からすれば、周辺国に武器をより多く売ることができれば、米国の多くの軍事関係だけでなく、多くの関連分野における資金が潤う。戦争準備段階において「武器をおおかた売り切った」と判断すれば、近く開戦ということもありえるかもしれないし、場合によっては、それで米国が満足すれば、戦争の一時回避を図る可能性すらもあるのではないかと思う。
ただし、それはあくまでも一時回避に過ぎない可能性もあり、問題を先送りしながら大量の武器を売り続け、周辺諸国が一通り購入した後にいよいよ開戦という可能性もありえないことはない。
戦争とは、このように非常に複雑な要素や事情が絡み合い、長い時間をかけて行われている。ただ我々、一般市民にとっては、「戦争は回避できるに越したことはない」のは確かであろう。(古畑貴志、石田健二、ツバンボラーダバー、福井和美、宮塚コリア研究所事務局)
古畑貴志(Takashi Furuhata)
Ph.D 米国ワシントン大学にて統計学で博士号取得、
石田健二
宮塚コリア研究所事務局長。
トッド・ツォグト ダバツレン(Todd Tsogt Davaatseren)
モンゴル ウランバートル出身。モンゴル国立大学 会計学専攻。
ハルザンバンディ ジャンバル(Khalzanbandi Jambal)
モンゴル オブス出身 元モンゴル経済産業省所属。
福井和美
宮塚コリア研究所事務局。
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