深夜に急転。安倍総理の裁量労働「撤回」を新聞各紙はどう伝えたか

 

「首相白旗」?

【毎日】は1面トップに3面の解説記事「クローズアップ」、5面の関連記事。見出しから。

1面

  • 裁量労働 今国会断念
  • 働き方法案から削除
  • 首相、異常値受け
  • 予算案 衆院通過

3面

  • 首相「後退」余儀なく
  • 裁量労働 今国会断念
  • 総裁3選へ戦略狂う
  • 経済界の反発必至

5面

  • 「首相白旗」勢いづく野党
  • 裁量労働 「分離では不十分」

uttiiの眼

《毎日》も《読売》と同様、「総裁3選」に触れている。そして、強気から一転して大幅な譲歩を余儀なくされたのは、与党から強い懸念が伝えられたからだとしている。その中には、「ばらばらだった野党がひとかたまりになる口実を与えてしまった」という内容も含まれていたようだ。維新を除く野党6党が連日鳩首会談をしていることや、民進と希望が「働き方改革」についての対案を合同で出したことなどもイメージされ、首相の危機感につながっていったのかもしれない。

《毎日》は全体に、今回の「撤退」を主導したのは自民党厚生労働部会だったと言いたいようだ。その点、《朝日の認識とかなり違っている。確かに、裁量労働制の「切り離し」が厚生族の間で強まったことについては報道されていたし、その背景に、今回の問題が第一次安倍政権を瓦解に追い込んだ「年金記録問題」を彷彿とさせるという自民党議員らの認識も明らかになっていた。《朝日》と《毎日》、どちらの認識が、よりリアルなのだろうか。法案からの「削除」を行えば、厚労族たちは満足するのか、それとも一層の不満を募らせることになるのか。

《毎日》の記事に「首相白旗」という興味深い表現。野党の要求通り、裁量労働制の対象拡大の削除を、安倍氏自身の口から言わせたのだから、野党としては「大勝利」だろうし、首相は「白旗」を掲げて降参したと言いたいところだろう。だが、もちろん、それでは不正確だ。政権へのダメージがどこにどのような形で出てくるかは分からないものの、政府は一応、打開策としての「削除」を決めたわけで、勢いづいた野党が嵩に掛かって挑んだとしても、相変わらず圧倒的な議席を持つ与党がいつもの強気に戻るなら、それを押しとどめるのは簡単ではない。

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