アメリカのパズルをちっとも読み解けない、日本の政治家の鈍感さ

 

安倍政権は外交でかなりの成果を上げていると自民党の中では評価されていますが、実際はその逆なのではと考えてしまいます。

まず、第一にアメリカの生々しい民衆の感触に対して安倍政権はあまりにも鈍感です。トランプ政権ができる前、外務省はヒラリー・クリントンが当選するものと決め込んで、トランプ側の人脈とはほとんどコンタクトを持たなかったといわれています。先ほど解説した、アメリカの世論の複雑さを考えたとき、それはあり得ないアプローチです。そしてトランプ大統領が登場したとき、慌てて安倍首相はアメリカを訪問したわけです。こうしたボタンの掛け違いがなぜ起こるのか。 それは、政治家の無知と官僚のおごりのせいかもしれません。

しかし、さらに言えることは、海外の人と庶民レベルのネットワークができていない日本の外交戦略に瑕疵があることをここで指摘したいのです。

そんなことを思いながら、パレードを見ていると、人々がひときわ熱狂してきます。みると、ニューヨーク出身の上院議員チャック・シューマーがパレードに加わって歩いていたのです。

ニューヨークのブルックリン地区には大きなユダヤ系コミュニティがあります。彼はそこで生まれ育った生粋のユダヤ系移民の子孫なのです。そして、彼は民主党の上院議員。共和党の保守派が地盤のトランプ政権とは対立した存在です。しかし、そんな彼でも、エルサレムへの大使館の移転の決定には強い支持を表明したのです。この複雑さを理解できない限り、そしてこうした人々とのネットワークをしっかりと維持しない限り、日本はアメリカの世界戦略に翻弄され続けるのかもしれません。

午後4時、パレードの喧騒が一段落し、週末のニューヨークに静けさが戻ってきました。

私は、ある友人の家を訪ねるためにタクシーに飛び乗ります。タクシーの運転手は運転中ずっと無線を使ってウルドゥ語で友人と話しをしています。彼は明らかにパキスタンから移住してきたイスラム教徒です。ニューヨークのタクシーの運転手にはそうしたイスラム系の人々が多くいます。彼らは今回のパレードを複雑な気持ちでみていたはずです。

ニューヨークから世界情勢が見えてきた一瞬です。

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