学校の「ブラック部活」が深刻化。形だけの週休2日では解決しない

 

もう1つ重要な考え方は「文武両道」です。日本の現状では、いわゆる受験校の場合に、部活は「高校2年の秋」に引退するということになっています。そこまで極端でなくても多くの学校では「3年の6月」で引退し、その後は「受験勉強に専念する」というのが常識であるようです。中学校の場合も、高校受験を意識して「中学3年の6月に引退」が主流であり、例えば「県大会に出て7月まで続けると受験に不利」などいう声も聞かれます。

要するに24時間365日の部活というような硬直したことをやっているので、受験の際は引退などという妙なことになるわけです。アメリカの場合は、高校は全入なので受験はないのですが、大学受験の場合はどうかというと、受験だから引退などというのは「問題外」であり、受験だからこそ「出願時点で必死で部活をやっているアピールが必要」とされます。アメリカ流の大学入試における判定制度では、スポーツの活動実績が「現在形で重視されているわけです。

この「スポーツ重視」については、大学の体育会がスカウティングの対象とするようなエリート選手だけでなく、全ての受験生が対象です。名門と言われている大学になればなるほど、スポーツ活動をちゃんとやっているか、その質と量が厳格に問われます。多くの場合、どんなに成績優秀でもスポーツ活動への参加履歴が消極的では不利になる仕組みがあります。

その背景には「健康な精神は健康な肉体に宿る」という生き方の問題、つまりスポーツをちゃんとやって、激しい練習を行いつつ、多量の宿題を期日までに終わらせ、しっかりした学力をつけるためには、睡眠や食事も含めた自己管理能力が問われるということがあります。

これに加えて「同時進行している多くの課題に取り組み、複数の組織に属し、全てについて期日までに成果を出す」というスキル、つまり「マルチ・タスク管理能力」とでもいうものを、大学が重視しているということがあります。

更に、スポーツ活動というのは集団活動であり、モチベーションを持って参加し、活動の中で指示に従い、ルールに従い、その中で集団としての成果に貢献することが重視されるわけです。また、リーダーシップを取って行く機会もあり、その際には年齢や学年の順位から自動的に権力が来ると言った「なんちゃってリーダーシップ」ではなく、真に尊敬され、下級生のモチベーションを引き出しつつ、スキル向上の援助をすると言った真のリーダーシップの訓練が必要です。そして、そのような訓練の成果は一生の宝になります。

この文武両道という考え方に立つのであれば、部活週休2日になった分、生徒を遊ばせておくのではなく、徹底的に勉強させるということも重要でしょう。1つだけ言うのであれば数学です。数学力は国力だからです。

image by: Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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