凄惨な殺人事件も。いま「神社本庁」周辺で何が起きているのか?

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全国の神社を束ね、安倍政権を強力にバックアップするなど、我が国において強い影響力を持つ神社本庁が大きく揺れています。元全国紙社会部記者の新 恭さんは、自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、神社本庁で今、起こっていることを詳細に記すとともに、日本の「神社界」が抱える闇を白日の下に晒しています。

神社本庁に何が起きているのか

全国約8万の神社をたばねる宗教法人「神社本庁」(東京都渋谷区)。安倍政権を後押しし日本会議や神道政治連盟でも中心的な役割を担ってきた。

この組織に、いま何が起きているのだろうか。現在の総長田中恆清氏(石清水八幡宮宮司)が辞意を漏らしているという。

象徴的な存在の「総裁」、各神社の職員を統督する「統理」に次ぐナンバー3だが、実質的に神社本庁を動かしているのは「総長」である。田中総長は日本会議の副会長でもある。

田中氏が自らこの権力を手放す気になった背景には、深刻な組織上の問題がよこたわっている。

深川八幡祭りや江戸勧進相撲発祥の地として知られる富岡八幡宮で2017年12月に起きた凄惨な殺人事件をご記憶であろう。宮司である富岡長子氏が元宮司の弟、富岡茂永とその妻に日本刀で襲われ、命を落とした事件。

弟は姉を殺害後、妻を殺し、「もし、私の要求が実行されなかった時は、死後においてもこの世(富岡八幡宮)に残り、怨霊となり、私の要求に異議を唱えた責任役員とその子孫を永遠に祟り続けます」との遺書を残して自ら命を絶った。

この事件がいま神社本庁と神社界がおかれている状況を象徴していると言うのは宗教学者の島田裕巳氏である。どうやら宮司の座をめぐる骨肉の争いというだけにとどまらないようだ。

神社界は格差社会である。富岡八幡宮は周辺の土地を多く所有し、莫大な不動産収入があった。島田氏は「金満神社」と称する。犯人である弟、殺害された姉、いずれも宮司の立場を利用して贅沢三昧を極めたという。

一般的な神社は富岡八幡宮とは様相を異にする。宮司でも年収300万円未満の人が60%をこえるらしい。とりわけ過疎化が進む地方の神社は苦しい運営を強いられている。

神社界のなかで、権力をふるい続ける神社本庁と、その支配を嫌がる金満神社。富岡長子氏の宮司就任を認めなかった神社本庁の傘下から富岡八幡宮が離脱したのが2017年9月末で、それからわずか3カ月足らずであの事件が起きた。

島田氏は著書『神社崩壊』のなかで、「(神社本庁と富岡八幡宮)の間に宮司の職をめぐって考え方の違いがあった…事件の背景にもそのことが深くかかわっていた」と指摘。事件後、神社本庁が傘下の神社に事件のコメントを封じるかのような文書を送ったことについて「神社界の体質を露呈した」と批判している。

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