昨年6月、ダイヤモンドオンラインに「瓦解する神社」という特集が掲載された。その第1回目の冒頭に以下の記述がある。
本庁で、目下、ある疑惑をめぐり「全国の神職を巻き込んだ騒動が勃発している」と本庁関係者は明かす。
というのも、本庁の一部幹部たちが「怪文書」や「名誉毀損文書」と呼ぶ、複数の匿名文書が、全国の神職関係者の間で飛び交っているからだ。さらに今月、業を煮やした本庁首脳がこれら匿名文書に対し、被疑者不明のまま名誉毀損で刑事告訴に踏み切るというから穏やかでない。
一部の幹部が業者とつるんで、神社本庁の不動産を転売して私腹をこやしているのではないかという疑惑だ。
20世帯以上が入る神社本庁職員用宿舎「百合丘職舎」(川崎市)が問題の不動産。これを1億8,400万円でA不動産に売却、A不動産はB社に即日転売し、さらにその後、B社が大手ハウスメーカーC社に転売、その価格が一気に3億円超に跳ね上がったという。
当時の本庁総務部長、小野崇之氏と、秘書部長だったS氏がこの売却話を進め、その資金で渋谷区代々木の中古の高級マンションを購入。S氏がマンションに入居し、小野氏は2016年2月、全国8,000社の八幡神社の頂点、宇佐神宮(大分県)の宮司に栄転した。
神社本庁が不動産など基本財産を取得する原資の多くは、傘下の神社からの“上納金”である。
各地の神社の収益源の一つは「神宮大麻」、すなわち「天照皇大神宮」と書かれた伊勢神宮の「お札」だ。神社はその“売り上げ”を、いったん都道府県の「神社庁」に納める。その後、各神社庁から伊勢神宮に“上納”されると、伊勢神宮は半分を手元に残したうえ、あと半分を「本宗交付金」として神社本庁に渡すしくみになっている。
その金額は30億円をこえるが、交付金として再び、都道府県神社庁、各神社へと戻されていく。神社が神宮大麻の売り上げをそのまま懐にしまえば、手数料として課税されるため、わざわざ面倒な手順を踏んでいるのだ。
神社本庁の実際の収入は、寄付金や神職の資格試験で得られる手数料など16億円ほどで、財産は90億円をこえるという。ダイヤモンドオンラインの記事では「不気味がるほどの額ではない」と書いているが、われわれ庶民の感覚からすれば、すごい金額である。
宮司をめぐる大神社と神社本庁の対立は「八幡宮」の総本宮、大分県の宇佐神宮でも起きていた。
宮司の人事は、氏子などから選出された責任役員の具申をもとに、神社本庁が任命する。富岡八幡宮の場合、先代宮司の引退後、宮司代務者に就いた長女を宮司にしようと責任役員会が具申したものの、本庁側が認めず、先延ばしにされ続けた。
宇佐神宮のケースも似ている。世襲家の女性権宮司について神社本庁側は経験不足であるとして宮司就任を承認せず、神宮の責任役員会と氏子総代会がこれに反発、裁判沙汰になった。2014(平成26)年5月15日、神社本庁は女性権宮司を免職にした。
そうした混乱のさなか、2016年2月、疑惑の百合丘職舎売却を主導したとされる神社本庁前総務部長の小野崇之氏が宇佐神宮の宮司として本庁から送り込まれた。宇佐神宮を支えてきた県神社庁宇佐支部は激しく反発し、新宮司と絶縁状態になってしまった。