いちローカルチェーンの「山田うどん」を全国区にした「ももクロ」の存在
このように「山田うどん」は歴史のあるチェーンであるだけに、リピート率が高い男性の顧客をつかみ、安定はしているが、半面顧客の高齢化が進んでいる。将来的に持続していくためには顧客層の若返り、拡大が新たな問題となってきた。店舗数も、最盛期の280店から比べると減っているのも確かだ。
その一方で、「山田うどん」の顧客層に変化の兆しが表れている。
たとえば最近は、ももクロこと、女性アイドルグループ「ももいろクローバーZ」が、ライブ前に力を付けるため「山田うどん」の「パンチ」(もつ煮込み)というメニューを食べていると公表。
「モノノフ」と呼ばれるももクロファンならば、或いはDDと呼ばれる「アイドル誰でも大好き」なアイドルファンも、もはや全国的に「山田うどん」を皆知っている状況となっている。
元々は、ももクロのマネジャーが「山田うどん」でアルバイトをしていた経験があり、熱く勧められてメンバーも「山田うどん」のファンになったとのこと。
ももクロのコンサート会場には、「山田うどん」の移動販売車が繰り出すのも恒例となっている。中高年男性も多い全国のももクロファンが上京してきた際には、ぜひ「山田うどん」の店舗に寄ってみたいといったニーズも高まっている。
また、北尾トロ氏とえのきどいちろう氏の共著による「山田うどん」研究本、『愛の山田うどん』(2012年3月刊、河出書房新社)、『みんなの山田うどん』(14年3月刊、同)も刊行され、昭和を感じる懐かしい味に世間の関心が高まってきている。
つまり、一度はファミレスと差別化するために、男性の職人とドライバーに絞り込んだターゲットがだんだんと合わなくなり、むしろもっとファミレスのように幅広い顧客層を意識して裾野を広げるほうが、お店のニーズに合致するようになってきたのである。
新規に出店した「ファミリー食堂 山田うどん食堂」では、住宅地に出店して休日にはファミリーが占拠するケース、ランチよりもディナーのほうの売上が好調なケースも目立ち、明らかに旧来の店と顧客層に変化が見られる。
もちろん、従来の男性ファンを見捨てるわけではなく、「ファミリー食堂 山田うどん食堂」では、立地によってファミリー向けの暖色系を使ったデザインと、男性ワーカー向けの落ち着いたデザインの2系統を使い分けていくという。
最近は、ワークマンで販売する作業服のファッション化が進んでいるように、若手の職人、ドライバーもデザイン性を高めた店に行きたいと意識が変わってきている。ワーカーが行くような店だからといって、従来のままで良いわけではなくブラッシュアップが必要なのだ。
新しく10月のメニュー改定から、3種類の夜ごはんが登場。煮込みハンバーグ定食、山田の特製豚汁定食、3種のタレで食べる唐揚げ定食となっており、評判は上々のようだ。夜ごはんが定着するようだと、「丸亀製麺」「はなまるうどん」のようなうどん専門店より、むしろ「大戸屋」「やよい軒」のような定食屋に近づいていくだろう。