赤いかかしを埼玉の県民食にした「学校給食」
なぜ今、「山田うどん」を「ファミリー食堂山田うどん食堂」に変えなければならなかったのだろうか。
大きな理由として「山田うどん」が不採算店の整理を終えて、経営の新たなステージに入ったことが挙げられる。
既存店を強化するために、2017年8月にはうどんの麺をリニューアルした。国産小麦100%に切り替えて食の安全性と国内農家の支援をアピールする一方、製法の工夫によって香り豊かでのど越しの良いうどんが誕生した。
山田社長によると「自家製麺のゆでうどんであることは変わらないが、おいしいうどんになったと胸が張れる自信作」とのことだ。
「山田うどん」チェーンの発祥を紐解くと、創業は昭和10年。山田食品産業の本社がある所沢市一帯は、もともと小麦の産地。その小麦から地粉をひく製粉工場を設立し、後に製麺所も併設した。
戦後、復興から高度成長へと向かう好景気に乗ろうと、1964年に工場を拡張して県内一の製麺工場となった。ところが製造したゆでうどんが売れず、もう自らうどん屋を出すしかないと66年に本社に隣接するロードサイドにドライブイン形式の店をオープン。それが「山田うどん」の起源となった。製麺工場の経営を続けるために、やむなく始めた商売だった。
うどん1杯の料金が70円ほどの時代、半額の35円で売ったので、爆発的な人気を博した。
一方、埼玉県西部の所沢、新座、朝霞、狭山の各市で学校給食に採用された。かかしマークが印刷されたビニール袋入りソフト麺などが、子供たちに親しまれた。「山田うどん」が県民食と認識されるようになったのは、お店の人気、店舗数拡大に加えて給食で提供されたことが大きかった。
しかし、70年代後半に台頭してきた「すかいらーく」をはじめとするファミレスの攻勢の前に、売り負けるケースも起こってきた。
そこで起死回生のため、ご飯物を投入。丼やカレー、チャーハンと、うどんやそばを同時にフルサイズで食べられるボリュームたっぷりのセットを、男性向けに売り出した。幹線道路のロードサイドに店舗がある利点を活かして、建設、工事関係の職人やタクシー、トラックなど各種ドライバーへとターゲットを絞り込んだのである。
つまり、ファミレスとの差別化が、当時の喫緊の課題だった。
以降、「山田うどん」はうどん専門店というようも、ご飯物とうどん、そばとのセットが最も売れる食堂業態として定着している。
健康を意識したヘルシーな低カロリーのメニューも出してみましたが、売れませんでした。山田うどんはやはりがっつり系でなければならないと痛感しました(山田社長)
一番人気のメニューは「かき揚げ丼」と、たぬきうどんまたはそばのセット(620円)。ざるうどん、そばでセットにするのも可能だ。かき揚げ丼とは、かき揚げをうどんのつゆと卵でとじた丼である。
ご飯ものには、グランドメニューに親子丼、かつ丼、チャーハン、かかしカレー、かつカレーとあり、それぞれたぬきうどん、そばとセットになる。また、プラス100円でしょうゆラーメンまたはざるラーメンとセットにすることも可能になった。