では、本題です。今回の外国人労働者の受け入れ拡大については、あちこちで私の意見は明確にしてあります。結論を申せば、「ノー」。現状で拡大することには大反対です。理由は、政府、いや企業が欲しがっているのは「日本経済の底辺を支える労働力」であり、労働の冗長性を担保するための存在として「外国人労働者」が必要なだけ。
日本政策金融公庫総合研究所が18年に発表した調査結果によれば(「中小企業における外国人労働者の役割~『外国人材の活用に関するアンケート』から~」)…
- 外国人労働者を雇用している業種のトップは、「飲食・宿泊業」で25.5%。次いで「製造業」(24.3%)、「情報通信業」(13.8%)
- 働いている人の母国は「中国」が38%で最多。次いで「ベトナム」18%、「フィリピン」7.7%
- 男性が女性より多く(56.4%)、男性は「技能実習生」が7割、女性は「非正規」が6割
- 月給は「正社員」は「22万円超」が6割、「技能実習生」は「18万円以下」が9割以上
- 時給は「非正規」の4割が「901~1,000円」、「技能実習生」の5割が「850円以下」
- 「技能実習生がいない企業」の33.2%が、正社員募集時の月給提示額を「22万円超」としているのに対し、「技能実習生がいる企業」では12.5%と激減
- 「技能実習生」を雇用する理由のトップは、「日本人だけでは人手が足りない」(42%)、次いで「日本人が採用できないから」「外国人の方が利点が多いから」が18.8%
さて、いかがでしょう? これらの結果から、「技能実習生=低賃金労働者」であり、日本人がやりたがらない仕事を、技能実習生が穴埋めさせているというリアルがわかります。
そもそも二言目には人手不足、人手不足といいますが、外国人労働者を雇用している業種は、もともと離職率が高い。28年度の雇用動向調査(厚労省)で、離職者数のトップは、宿泊業、飲食サービス業で1,373.1千人。離職率は30%です。
やめる理由は「給料等収入が少なかった」「労働時間、休日などの労働条件」とする人が多く、特に前者は近年増加しています。
人手不足を理由にあげるなら、まずは「離職率を下げる努力」が必要不可欠。「ここで働きたい!」という職場を経営者が作ることです。
そもそも「実習生」なのに「解雇」とか、「実習生」なのに「過労死」とか、まったくもって意味不明。16年度に事故や病気で亡くなった技能実習生・研修生は28人。脳・心疾患が8人で、全体の3割が「過労死」と考えられているのです(「国際研修協力機構」の報告書)。
厚労省のHPには、
外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。
とあります。どこが「開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』」なのか。形骸化している「技能実習制度」はもはや不要です。