北の漁船漂着が2017年超え。なぜ北海道への漂着が増えているのか?

 

さらに、北朝鮮のテレビでは金正恩委員長が夫人を同伴して、水産加工工場を現地視察しながら、工場で生産された「塩辛」の製品を手に取って喜悦の表情を浮かべている映像が映し出されたり、荒海で操業する漁師のドキュメンタリー映像が放映されるなど、人民の日本海側でのスルメイカ漁への関心と期待を集めている。

北朝鮮では自国の船が操業中(または操業前にすでにエンジンの故障などにより)に漂流し、日本の海岸に漂着して、多大な被害を与えているということは一切報じていない

昨年、北海道の松前沖の無人島で船長などが発電機などを盗んで摘発され、有罪判決を受け強制送還されたことや、病気の漁師を病院で治療し600万円以上の治療費がかかったことも報じてはいない。それどころか、北朝鮮政府の対外写真広報誌ともいえる『画報 朝鮮』の今年11月号には、最新鋭の漁船が建造され、大量の漁獲が期待されているというニュースを載せているが、これは日本の海岸に漂着する木造漁船とは異なり、鋼鉄船で、しかも、日本海側ではなく、黄海側での操業船である。

相次ぐ漂着船に漂着された自治体にとってはまさに「招かれざる客」以外の何物でもなく、処分費用は国から支給されるというが、無残な残骸をそのまま野ざらしにしておくのも、地域の住民にとっては決して気分のいいものではない。それどころか、私の故郷である由利本荘市では昨年11月23日の深夜に突如現れた北朝鮮の漁師8人の事件の恐怖がいまだに消えておらず、「また、いつ来るかもしれない…」と警戒している。

ある識者は「北朝鮮でイカ漁は儲かる」という指摘に対して、「漁師が大和堆あたりに行ってスルメイカを獲ってきても、燃料費も稼げないのではないか」と言っていたが、これは「漁師が儲かるからというよりも、金正恩委員長の“魚を獲って食糧問題と食生活を改善せよ”という絶対命令により、水産会社は荒海に危険を冒してまで漁に出て魚を獲らざるを得ないのが実情」で、金正恩委員長が水産工場を現地指導したときに、水産物が少なかったら「自分の命令を無視したのか」と、責任者は罷免・粛清されるのである。

最近、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)で漁獲されたイカの輸入によって、年間で最大469億円の経済損失が発生している、との報告もあるが、北朝鮮漁船の違法操業は増加する一方で、日本海岸への漂着はこれからも続く。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: Alex-VN / Shutterstock.com

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