北の漁船漂着が2017年超え。なぜ北海道への漂着が増えているのか?

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日本海が荒れる冬とともに、北朝鮮漁船の漂着のニュースが聞こえてくるのは、ありがたくない風物詩となってしまうかもしれません。北朝鮮研究の第一人者、宮塚利雄さんが発行するメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、金正恩の絶対命令により、漁船漂着数が2017年の数を超えてしまった中でも、北海道への漂着が増加している点を解説しています。

今や冬の風物詩となった北朝鮮の漂着木造漁船の残骸

北朝鮮の晩秋から初冬にかけての風物詩は、全国各地にある協同農場での「生産分配」の行事であった。秋祭りよろしく各協同農場では1年の収穫を祝い、分配を受け取るために各農場ごとに、その年に収穫された作物をうず高く積んだ中で分配が行われ、勤勉な農民には分配金のほかに扇風機やミシンなどが与えられ、喜びに沸く各農場ごとの分配風景が「労働新聞」の紙面を賑わした。

もっとも、これは今から20年以上も昔のことであるが、最近、日本海側の北海道から東北、北陸地方の海岸一帯に北朝鮮の小型木造漁船の漂着が相次いでおり、原形をとどめない無残な姿で砂浜や岩場に打ち上げられている姿は、この2、3年来のこれらの地域にみられる風物詩となっている。

今年(2018年)は11月半ばにしてすでに昨年(2017年)の漂着数を上回る150隻以上に達し、遺体も見つかっているが、生存者は今のところ確認されていない(一部の識者の中にはすでに日本国内に上陸しているのではないか、と話していて、その可能性をまったく否定することはできないが)。

なぜ、今年は北朝鮮の漁船の漂着が多いのか。特に北海道への漂着数が増加しているのが目立っている。日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)内には好漁場(私は海の生簀(いけす)と説明しているが)として知られている大和堆があり、この周辺に北朝鮮籍や中国籍の漁船が出没し、違法操業を繰り返しているが、今年は日本側の警戒が厳しく、これを避けてこの大和堆よりも北方にあるもう1つの好漁場である武蔵堆での操業に主力を転換したこともあって、北海道への漂着船が増えたようだ(これとは直接関係はないが、11月17日に大和堆周辺で日本の漁船と韓国の漁船が衝突するという事故が起きている)。

漂着した木造船の残骸を見ていると、操業中に故障して漂流、漂着した船もあるが、中には、今年は日本海側へ抜ける台風が相次いだこともあり、北朝鮮の港に係留されていた漁船がこの台風の影響で流され、潮流に乗って日本の海岸まで漂流してきたものもある。

これもまた一部の識者の話として、「北朝鮮側が意図的に船を漂流させたのではないか」という指摘もあるが、これはあり得ないだろう。むしろ、金正恩政権はシンガポールでの米朝首脳会談以後、それまで核・ミサイル開発に投入していた石油製品類を、民生用に流用し、さらには「瀬取り」などで不法に製油類を蓄えており、漁船の燃料供給事情は好転しているといわれており、日本海側での操業漁船も例年よりも多くなっているという。

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