大人になったら試したい、毒親の呪縛から自由になる2ステップ

 

次なる段階は、感謝できることを見つけること

そして、次は感謝を使ってみます。
あのお母さんに感謝できること。
これはここまでのプロセスをある程度こなしていないとできないことかもしれません。

私も長年、こういうお仕事をしているお陰で様々な母娘関係に接して来ました。
ほんとうに感謝することなんて見つからないようなネグレクトおかんや、幼少期に家を出て行ってしまい、記憶にも残らないおかんもいます。

しかし、それであったとしても人間ってすごいんですよね。
感謝の思いを掘り当てることができます。

だから、ここは大いに時間をかけてみるといいでしょう。

そうして、感謝できることが見つかる頃にはお母さんに対して線引きができるようになっています。

劇的に楽になる、というよりは、肩の力が抜ける、という感じになります。

人によっては「お母さんのことを嫌っていたのではなく、自分のことが嫌いだったんだ」と気付いたり、「お母さんのことがほんとうは大好きだったんだ」ということを思い出したりされる方もいます。

そうして、理解、受容、感謝に意識を向けていると、だんだん実家に帰ってお母さんに接するのが苦痛じゃなくなってきますし、お母さんの言動に影響されなくなっていくでしょう。

お母さんに対して罪悪感を覚える、ということは、Yさんの中にお母さんへの愛がちゃんとある、という証です。

私は許しを無理やり勧めることはなく、その人が許せるようになりたい、と思ったときだけ、上記のような提案をしています。

また、こういうお母さんの話を聴くと、ある話を思い出します。
これは『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』の5章で紹介している実話です。
少し長いですが、良かったら読んでみてください。
(編集前の文章ですので、実際の本の記述とは若干違いがあります)

ある時、母親との関係に悩んだ女性がセッションにいらっしゃいました。
彼女の母親はとても心配症で彼女の行動にあれこれと口出しをし、時には彼女を侮辱したり、否定したりする言動を繰り返してきました。それで思春期に衝突をし、高校を卒業するとすぐに彼女は一人暮らしを始めました。
しかし、恋愛がうまく行かないことをきっかけに私のブログを見つけて下さり、どうやらその原因が母親との関係にあるのではないか?と思って来てくれたのです。
 セッションを進めていくと、だんだんお母さんがなぜそんな態度を採ったのかが理解できるようになり、徐々に彼女のお母さんに対する怒りや恨みの感情は収まって行きました。
しかし、まったく愛情や感謝を示してくれなかった母親に対する気持ちから、「母親もカウンセリングを受けるべきだ」と思い付き、ある時、半ば強引にお母さんをカウンセリングルームに連れて来られたのです。

 そこで、私はお母さんと1対1で話をする時間を作り、ゆっくりお話を伺うことにしたのです。そうすると始めは戸惑っていたお母さんも徐々に心を開いて下さり、このような話をしてくださったのです。

「私は良い母親ではないとずっと自分を責めています。あの子にはほんとうに申し訳ないことをしました。夫との関係が元々あまりうまくいっておらず、また、私は関東の出身で、関西には友達一人おらず、ずっと孤独だったのです。
それで、気持ちの持って行き場がなく、娘に辛く当たったりしたこともたくさんありました。そのたびに申し訳ない気持ちでいっぱいになるのですが、その時の私は娘に謝ることもできませんでした。
それでもあの子は明るく、元気にいつも私を励ましてくれました。あの子には弟がいるのですが、体が弱かったものですから私はそちらに手がかかりっきりで、娘にはとても寂しい思いをさせたと思います。
そんな時もあの子は私をよく手伝ってくれましたし、ほんとうに助かったのです。しかし、余裕がなかったせいか、私も未熟だったせいか、娘には感謝の気持ちを伝えることはありませんでした。
言おう言おうとはずっと思っていたのですが、その勇気が出ないままに、あの子は思春期になり、私に反抗するようになりました。
それも私のせいだと思いましたが、私も素直になれませんでしたから、さらにあの子には辛く当たってしまったのです。ほんとうにこんな母親で申し訳ないと思っています。」

最後は涙ながらに懺悔するように言葉を紡いでくださいました。それを聞いて、お母さんに私は「今からでも遅くないんじゃないでしょうか?娘さんはお母さんのことを助けたいからカウンセリングに連れてこられたのだと思います。ぜひ、その気持ちを娘さんに伝えてあげませんか?」と提案したのです。
しかし、お母さんは首を振り、「いや、今さら私がそのようなことを言っても娘は信じてくれないでしょう。それだけひどいことをした母親ですから恨まれても仕方がありません。」とおっしゃったのです。
そこで私は「それならば、この紙にそのお気持ちを書いてくださいませんか?このあと、娘さんとお会いしますから、私が伝書鳩になってお渡しさせていただきます」と伝えました。
それなら、と彼女はその後、時間をかけて娘さんへの思いを書き綴って下さったのです。それはほとんどが娘さんへの謝罪の言葉で埋め尽くされていましたので、私は「できれば感謝の言葉も入れてあげてください」とお願いしたほどでした。

そして、私は娘さんにそのコピー用紙に書かれた手紙を読んで頂きました。はじめは「嘘だ。お母さんは嘘をついている。こんなことを思っているわけがない」と抵抗していましたが、何度も読み返すうちに彼女の目にも大粒の涙が浮かんでいました。

彼女は一生懸命お母さんを助けてきました。弟の治療や面倒で大変なことを察していい子にしてきました。しかし、一度も感謝されたことも褒められたこともないので、逆にそれを恨むようになっていたのです。
しかし、それは真実ではありませんでした。お母さんは本当は彼女に感謝し、また、愛情をかけてやれなかったことを悔やみ、罪の意識を強く持っていたのです。

お母さんの手紙の最後には「○○(彼女の名前)がこんな私の娘に生まれて来てくれて、ほんとうに感謝しています。ありがとう。」という言葉が綴られていました。

その言葉を何度も読み返し、「根本さん、お母さんはほんとうにこう思っていると思います?」と聞いて来られました。
私は「嘘はついていらっしゃらないと思いますよ」と答えると、彼女は黙って頷き、「信じてみたいと思います。今日、お母さんを連れて来てほんとうによかったと思います。お母さんが楽になればいいと思っていたのですが、むしろ、私の方が助けられました。ありがとうございました。」と言い、カウンセリングルームを後にされました。

私たちが目に見えるものだけがすべてではありません。
あなたが今まで手を差し伸べ、気を使い、我慢することで助けられた人、喜んでくれた人、幸せを感じた人はきっといます。
さあ、それは誰でしょうか?
そして、もし、彼らがあなたに感謝しているとしたら、あなたはどのような気持ちになるでしょうか?

人のために頑張りすぎて疲れたきに読む本

image by: Dragon Imagesshutterstock.com

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【著者】 根本裕幸(心理カウンセラー) 【発行周期】 ほぼ 日刊

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