日韓の衝突不可避、米が北攻撃?最後の調停官が2019年を大胆予測

 

トルコがcasting voteを持つことになる中東情勢

そして、中東問題については、2019年はさらに混迷を深めるでしょう。マティス国防長官が最後まで抵抗したシリアからの米軍の撤退は、中東におけるパワーバランスを完全に変えてしまうことになりかねないからです。

すでにプーチン大統領は、「中東にアメリカは必要ない」と皮肉な形で歓迎していますし、イラン問題への対応やクルド人勢力への米軍の支持、ギュレン師問題、米国人牧師拘束事件などで悪化の一途を辿っていた米・トルコ関係も改善し、ついには2019年にトランプ大統領のトルコ訪問まで計画されているという状況は、トルコと一触即発の緊張関係に陥っているサウジアラビアへの凄まじいボディーブローになるでしょう。

また、トルコにとっては、クルド人勢力掃討に再度集中できることから、シリア問題のハンドリングでも、主導権を握ることが出来るようになり、一気に、中東地域の“未来”に対するcasting voteを持つことになります。 軍事的には対立したくないイスラエルとは現在は悪い関係にはありませんが、トルコが、イスラエル(そしてアメリカ)の宿敵イランの後ろ盾で、その後ろもしくは横にはロシアが控えているという微妙なバランスが変わることは必至で、中東における大きな転換の1年になることと思われます。

2019年は不穏で不安定な世界への移行の1年

2018年は、多くの怒り(anger)が渦巻き、多くのスキャンダルが暴かれ、多くの情勢がchangingしてきました。そして、国際協調主義の終わりの“始まり”が明らかになり、それぞれが自分さえ良ければという自国優先主義に舵を切り始めた年となりました。

2019年に向けた不安と不穏な空気を予見するかのように、年末に世界は同時株安に見舞われました。そして、日本を巡る情勢も大きく変わり始め、特に対韓国では直接的な衝突さえ予見させるほどの緊張感が高まりました。

6月に希望を見出したはずの北朝鮮問題の“穏便な”解決の扉も、2019年の前半には、このままでは閉じてしまい、2020年の大統領選挙に向けた“得点稼ぎ”で、すでに韓国を見捨てたアメリカは、北朝鮮を攻撃するかもしれません。 それが隣の大国中国をどう刺激し、東アジアはどのような状況に陥るかは、今後、米中の関係、そして米ロの関係が、水面下でどう改善され得るかにかかっていると考えます。

そのような不穏で不安定な世界へのtransitional year(移行の1年)が2019年であると、残念ながら、私は思えて仕方がありません。皆さんはどう思われるでしょうか?

image by: viper-zero / Shutterstock.com

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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