「医者の不養生」を強要。残業上限2000hまで働かされる医師の悲惨

 

「人の命は重いというのに、医師の命は軽んじられている」と、以前、大学病院に勤務する息子さんがうつ病になった方をインタビューしたとき嘆いていましたが、医師は鉄人でもなければ、ロボットでもない。週50時間以上の労働をし、睡眠時間が6時間未満になれば、私たち同様、心疾患や脳梗塞のリスクは高まります

残業時間を2,000時間まで容認するってことは、「一人で二人分働け!」と国が強制するようなものです。

これまでも散々指摘してきましたが、医師の健康状態はまんま患者さんに跳ね返ります

● 長時間勤務になると、針刺し事故が統計的に有意に増加
(Ayas NT, Bager LK, et.al .Extended work duration and the risk of self-reported percutaneous injuries in interns. JAMA ,2006)

● 3日に1回 24 時間以上の長時間連続勤務をした場合と長時間連続勤務の上限を16時間、週当たりの勤務時間を60時間に制限した場合を比較すると、24時間以上の連続勤務の「処方ミスと診断ミスが明らかに多い
(Landriga CP, Rotheschild JM, eta al. Fffect of reducing interns’ work hours on serious medical errors in intensive care units. N Engl J Med,2004 )

● 前日に当直であった医師が執刀した手術後 の患者においては、合併症が45%多かった
(Haynes DF, Schewedler M, et al. Are postoperative complications relted of resident sleep deprivation? South Med J, 1995)

…etc.,etc.

昨年実施された調査では、84.2%の医師が医師の残業規制を緩くする方針に反対しています。反対理由を見ると、お医者さん自身も患者さんを危険にさらすことに危機感を募らせていることがわかります(参考記事「84.2%の医師が反対!「医師の残業規制は緩く」の方針へのドクターたちの意見」)。

医師不足は1982年に「2007年頃に医師が過剰になる」として、医師数の抑制を閣議決定したことに起因します。ところが実際には、2004年にはOECDの医師数の平均と比べると日本は12万人も不足していることがわかりました(人口1,000人当たりの臨床医師数)。

それでも政府は「2022年には医師は充足する見通し」として、積極的に医師を増やそうとしませんでした。その理由とされているのが、

  • 問題は開業医の多さにあり、トータルが足りてないわけじゃない
  • 医師が増えると医療費が増える

という懸念です。

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