大地震で倒壊まで解体すらできぬ「既存不適格マンション」の苦悩

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築年数が古く、耐震基準を満たしていないマンションは建替え必須でその合意を所有者から集める必要がありますが、予想される経費に匹敵する建替えプランを示せず放置されているのが現状です。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、マンションの価値上昇を狙える建替えプランの提案を試みています。

既存不適格マンションの建替えをシミュレーション

立地がよければ既存不適格でも建替えられる?」では、耐震性が不足して耐震改修のめどが立たないのに既存不適格で建替えも難しいと思われているマンションでも、立地によっては、建替えの合意形成ができる可能性があるのでは…という話をしました。過去記事でも書いているように、

高経年団地と旧旧耐震小規模マンションをどうする?

今、将来の方向を見極められず厳しい状況にあるのが、「旧々耐震基準」といわれる1971年4月以前に建てられ、大きく耐震性が不足しているのに、耐震改修のめどが立たたず既存不適格建替えも難しいマンションです。

厳しい状況にあると書きましたが、立地のいいマンションは耐震性に関わらずそれなりの市場価格を有しているので、危機感を持っていないところもあります。考えないようにしている…ということでしょうか。そのため、大幅な耐震性不足が明確になることを避けるため耐震診断を避けているマンションも少なくありません

過去、大地震で建物が大きく破損しても、マンションでは、人の命に関わるようなことにはなっていないから、このまま耐震改修はしないで維持管理していく。大地震で大きく破損したら、その時は覚悟を決めて解体する。これまでの事例だと公費で解体でき地震保険の保険金もおりるので、有利な建替えができる。そう割り切っている…という管理組合すらあります。

旧々耐震基準で建てられている上に容積率が引き下げられ既存不適格になっているマンションにはそう思うしかない八方ふさがりの現実があるのです。

それでも、大震災で被害に遭った方の話を聞くと、自分の住まいが大きく破損する恐怖と、突然、生活の場を失うことになる困難さはたいへんなもので、そんな思いを、高齢のマンション居住者の方にさせたくない。そうなる前に何とかできないか…と最近強く思うようになりました。

そんな状況で、「住宅の広さより立地」。立地が良ければ、住戸は狭くてもいい…という昨今の住宅購入者の価値観の変化を知り、容積率が引き下げられた既存不適格マンションにも建替えのチャンスがあるのではないかと思ったのです。

さて、問題は事業者が現れるかどうかです。自分たちで建替えというより、立地を最大限に生かすプランにして、戻りたい人は戻れるようにする…ということで、一旦、事業者に敷地を売却して、(耐震性が不足しているので、4/5の特別多数決議でOK)土地の代金(解体費用が差し引かれる)を受け取り、区分所有者に分配する。その費用で、別のマンションに住み替える人、高齢者施設等に入居する人、仮住まいを経て、建替え後に戻る人(部屋は小さくなっているが…)いろいろな選択があるでしょう。

例えば、築50年でも、今、65平米で4,000万円の価格で流通しているとして、建て替え後、50平米で7000万円で売り出せたとしたら、何とか事業の採算がとれる可能性があるかもしれません。ものすごくざっくりした話ですが…。

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