暗礁に乗り上げてしまったレーダー照射問題について、韓国国内でファクトチェックの動きがどうなっているのか気になると語るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さん。小川さんは、自身が日本のファクトチェック団体「FIJ」の理事を務めていることもあり、ファクトチェックについては韓国の方が日本より先進的であることを紹介しています。
レーダー照射問題と韓国のファクトチェック
韓国駆逐艦のレーダー照射問題について、韓国のファクトチェックはどのようになっているのか、気になっています。韓国政府側の客観性を欠いた牽強付会ともいうべき「反論」について、韓国の国民からも批判が出ています。
「文政権と左派たちよ、お前らがめちゃくちゃにした、しっちゃかめっちゃかにした韓米関係、韓日関係、あとで誰がどう収拾するんだ」「経済も国防・安全保障も、困るのは韓国であって、米国や日本が困るだろうか」
以上は主要紙『朝鮮日報』に掲載された読者の声の一部ですが、YouTube上では賛同する声のほうが圧倒的に多いのが印象的でした。この『朝鮮日報』には、日韓両国のつながりを重視すべきだとするソウル大学教授の一文も掲載されています。
しかし、ファクトチェックとなると、私の耳には届いてこないのです。日本と比べても、韓国のファクトチェックへの取り組みは先進的な印象があります。
国際的なファクトチェックの動きについて、2017年7月、マドリードでの国際会議に参加したファクトチェック・イニシアティブ・ジャパン(FIJ)の楊井人文事務局長のレポート(2017年7月15日付Yahoo!ニュース)から関連部分だけを引用します。
2017年7月3日~5日、スペイン・マドリッドでファクトチェック国際会議『Global Fact 4』が開かれ、40カ国以上から過去最多となる約180人の関係者が一堂に会した。
国際会議は、2015年に発足した国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が主催。3日間、ワークショップなど20を超えるプログラムが行われ、ファクトチェックに携わるメディア・団体をはじめ、研究者やエンジニア、グーグルやフェイスブックなどプラットフォーム事業関係者など幅広い層から参加した。
ファクトチェックとは、一言で言えば『言説の真偽検証』だ。政治家など公人の発言、メディアの報道、インターネット上の言説など、社会に大きな影響を与えるあらゆる情報が対象となる。意見や論評が正しいかどうかではなく、もっぱら事実の正確性を検証することに主眼をおく。
こうしたファクトチェック団体は欧米に限らず、中南米、アフリカ、アジアにも広がっている。ポリティファクト創設者で現在デューク大学教授のビル・アデア(Bill Adaire)さんは、その数が3年前の48から126に増えたことを明らかにした。
お隣の韓国でもファクトチェックに取り組むメディアが急増している。今年、国立ソウル大学(SNU)にファクトチェックセンターが設立され、多数のメディアが参加したプラットフォームが稼働し始めたのだ。
大統領選を控えた今年3月、SNUファクトチェックセンターが発足すると同時に、公共放送KBSや中央日報など16のメディアが参加。投票前日までの約1ヶ月間、主に候補者の発言に対するファクトチェックを177件も行った(現在は22メディアに拡大)。(2017年7月15日付Yahoo!ニュース)
2017年6月に最初の取り組みとしてファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が発足した日本から見れば、先進的という表現でも間違いないでしょう。