カネが何千億かかろうとも辺野古移設を進める「利権村」の正体

 

それでも、政府が頑なに工事を進めようとするのはなぜなのか。

もともと、防衛省は辺野古の陸地側に広がる米軍基地「キャンプ・シュワブ」の敷地内に飛行場を建設する「L字案」をまとめていた。これなら辺野古の海を埋め立てる必要もなく、工期もさほどかからない。

事情を米国政府に説明して元の計画に戻そうと思えば、エネルギーを要するが、全くできない話でもない。それをしようとしないのは、工期が長くなっても仕方がないと思える事情があるからだろう。

もともと米軍にとって普天間基地返還は、老朽化した基地から近代的な施設への移転を目的としたものだった。基地周辺住民の「危険除去」とはあくまで、米兵少女暴行事件を契機に高まった反基地感情を和らげるため日本政府が国民向けに強調してきたフレーズだ。

当時の事情をもっともよく知る元国土庁事務次官、下河辺淳氏が2003年、江上能義早大大学院教授にこう語っている。

「普天間は移転しなくっちゃ防衛上の役割は果たせないというのが海兵隊の結論です。軍事技術上の問題、近代化の必要から移転するわけですから」

辺野古という場所に目をつけたのは米国側だった。大田昌秀元沖縄県知事は2015年、国会で次のように証言した。

「米国立公文書館の解禁になった資料をチェックしたら、なんと1965年に沖縄を日本に返す話が始まったときに、(米軍は)アメリカのゼネコンを招いて、西表島から北部の今帰仁港まで(基地移転の候補地)を全部調査させて、その結果、大浦湾が一番いいということに決定し…計画を立てた。ところが、ベトナム戦争のさなかで、金を軍事費に使い過ぎてできなかった」

いったんボツになった米軍のプランを、普天間基地返還と引き換えに、日本の建設費負担と思いやり予算をつけて復活させたのが、辺野古新基地計画である。

そして、その大プロジェクトに群がった利権集団が、事業規模を拡大すべく政治家と防衛官僚、米軍関係者を動かしてきた。

基地利権村”のメンバーは、辺野古の工事を受注している大成建設五洋建設をはじめとする大手ゼネコンや、それらと共同企業体(JV)を組む地元の土木建設会社など。いずれも防衛省から天下りを多数受け入れている企業群だ。その資金や票をあてにしている地元政治家らも含めていいだろう。

2016年1月3日付の朝日新聞は、防衛省が直近の2年間に発注した辺野古移設事業の8割にあたる730億円分を同省・自衛隊の天下り先企業や共同企業体が受注、辺野古受注業者10社が、工事入札前の2014年だけで、6,300万円を自民党に献金していた、と報じた。

沖縄防衛局は、かつての那覇防衛施設局である。基地などの軍事施設をかかえ国交省と並ぶ公共工事の大発注元である防衛施設庁の地方組織だ。工事を各企業に割り振っていく防衛施設庁の官僚は、天下り先にこと欠かない。

それゆえ企業との癒着腐敗は進み、案の定、談合事件など不祥事が相次いで、防衛施設庁は2007年9月1日に廃止、防衛省に統合された。それにともなって、那覇防衛施設局が沖縄防衛局に改組された。

それでも、いまだに天下り癒着の構造は変わらない

辺野古基地の建設が反対運動で長引くほど、地域振興策の名の下にその周辺自治体に落ちる公共事業予算がふくれあがる

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