女性同士の結婚式出席で感じた「多様性を認める社会」の深さ

 

出席したこのオーストラリアのパーティは、結婚した私の友人が大学に所属する芸術家であるから、コミュニティはアカデミック領域の方、そしてゲイやレズビアン、老若男女が入り混じる。

詩の朗読や歌、スピーチ、ダンスで盛り上がる。当初は会場脇のグラウンドでクリケットも予定されたが、季節外れの風雨で中止。その代わりに外で焚火を囲んで語らう人もいた。新しいカップルの誕生を真ん中に、誰もが幸福に過ごしている様子は参加者としてストレスなく気持ちがよい。

日本の結婚式と同様に本人や両親のスピーチも涙とともに披露されたが、同性婚であるという特殊性を認識することは皆無だ。あるのは2人の幸せを心から祝福しようとする自然な思いだけ。

最後には、パートナーの1人がスピーチで締めくくった。「このパーティで来られた方とのコミュニティが幸せになる人を増やしていく」。結婚を祝福するパーティはコミュニティ形成の場でもあり、この2人の幸せの門出に議論の余地などない。

日本から唯一の客であった私と妻に多くのオーストラリア人があいさつとともに職業を聞いてくるので、「障がい者向けの学校を作った」という話をすると、その反応に驚きはない。障がい者向けの学習が日本より充実しているオーストラリアでは、手法について本質的な議論ができる。この基礎は同性婚を認める社会につながっていると思う。

LGBTを「生産性がない」と口走る与党の現職議員がおり、それを擁護する論客がいる中で、この考えを正面から受け止め、そして反論し、同性婚の可能性を追究する議論が展開されないのは、新しい結婚の形がどのようなコミュニティを形成し、社会に「生産性」を持たせるかを説けないからでもある(生産性の議論は無益だとの指摘もあるかもしれないが、いったん議論する可能性は考えたい)。

現在、同性結婚についての裁判も行われているが、同時に身近なところで多様性の議論をすることも必要のような気がする。

image by: Yulia Grigoryeva, shhutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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