ヒトラーと同じ轍を踏まず。安倍総理は外交の舵をどう切るべきか

shutterstock_251930578
 

ユダヤ人の民族大虐殺を主導するなど、20世紀の世界に混乱をもたらした史上最悪の独裁者、アドルフ・ヒトラー。今回、国際ジャーナリストの北野幸伯さんは、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、敢えてこの悪名高き独裁者ヒトラーが率いたドイツの戦闘経過を記しながら、そこから学ぶべき「負の教訓」を挙げるとともに、日本の現在の外交戦略に対して疑問を投げかけています。

ヒトラーは、どこで失敗したのか?

日本は、概して「善悪論」ですね。今までは、ずっと「日本だけが悪い」ことになっていた。これを「自虐史観」といいます。ところが最近は、「実をいうとアメリカの方が悪かった」ということになりつつある。フーバー大統領やマッカーサーの証言が知られてきた。それで、ルーズベルトは真珠湾攻撃を事前に知っていた」ことが認知されつつある。そうはいっても「世界的に認知されつつある」とは、ほど遠い状態ですが…。フーバー元大統領が、「ルーズベルトは狂人だ!」といっている。マッカーサーも、「日本は自衛戦争だ」といっている。それで、私たちは「自虐史観」から抜けることができます。

しかし、私たちは次のステップに進まなければなりません。それは、「じゃあ、どうすれば勝てたの???」という質問に答えることです。これちゃんとやっておかないと、「また敗戦」ということになる。相手がズルしたとか関係なく、「じゃあどうすれば勝てたの?」と考える。これ、絶対必要ですが、日本ではほとんどされていません

それで私は、『中国に勝つ 日本の大戦略 プーチン流現実主義が日本を救う』を書きました。ここに、「どうして負けたのか?」「どうすれば勝てたのか?」「次はどうすれば勝てるのか?」の答えを書いています。まだの方は、是非ご一読ください。

私は、歴史の勉強をしていて、はっきりと勝ち負けの法則があることに気がつきました。今回は、「ヒトラー」の例をあげます。

ヒトラーの跳躍

「アーリア人種は世界一優秀」「ユダヤ人を絶滅せよ」など、過激思想で知られるヒトラー。彼は、なぜ政権につくことができたのでしょうか?

一つは、第1次大戦の講和条約であるヴェルサイユ条約ドイツに過酷だった。ドイツは、欧州のかなりの領土と、海外の植民地を失いました。そして、賠償金は、国民総所得の2.5倍という膨大な額。今の日本でいえば、「1,250兆円の賠償金」という感じ。それで、ドイツ人は怒っていた】のです。この【怒っていた】という状態、重要です。

そして1929年に世界恐慌」が起こった。ドイツでも、失業率が40%まで跳ね上がりました。この怒りと絶望に乗じてヒトラーは政権をとった

1932年の議会選挙でナチスは、第1党に。1933年ヒトラーは首相に。1934年、ヒンデンブルグ大統領が死んだ。ヒトラーは、「首相と大統領を兼任する総統」になりました。この措置、国民投票で約9割の支持を得た。そう、日本人に匹敵するほど勤勉で真面目なドイツ人たちは、明らかにヒトラーを支持していた。それも、圧倒的に。

政権につくとヒトラーは、なんと「ケインズ的政策」を徹底的にしました。高速道路をジャンジャンつくり、住宅補修、改修に補助金を出し。「自動車を一家に1台」をスローガンに掲げ、自動車購入は免税とした。さらに、結婚奨学金を出し、家事手伝いを奨励。労働市場から女性を、退場させた。徴兵を復活させ、86万人の失業者を吸収させました。

1935年、首相就任からわずか2年。ドイツの失業率は、40%から激減し、完全雇用が達成された。1936年のGDPは1932年比でなんと50%も増加した。ドイツ国民は、ヒトラーをと仰ぐようになりました。

print
いま読まれてます

  • ヒトラーと同じ轍を踏まず。安倍総理は外交の舵をどう切るべきか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け